妖精と…

□妖精とゲームのルール
3ページ/5ページ

「えぇっと…、質問の意味が解らないのですが…。」

 フィリアは質問に質問を返した。

「はぁ、おまえが礼を述べたあと、空中でしきりに指を動かしていただろう。おまえの目線もそこから離れないし、何かあるのかと不振に思ったから聞いてみただけだが?」

「………。」
 フィリアは言葉を失った。

フィリアには手元に青白い四角い板―ホロウィンドウが見えているが、男には見えていないようだ。

(私、不可視機能オンにしてたかな? いや、もしオンにしていたとしてもウィンドウ自体が見えないことはないはずなんだけど…。何かのバグ??)

 フィリアは左手を左右に振り、一度ホロウィンドウを閉じたあと、もう一度ウィンドウを開いた。

「これでも見えません?」

 フィリアは手元の画面を指差し、男に尋ねた。

「なにも見えないが…。で、何があるんだ?」
「何って…、ホロウィンドウに決まっているじゃないですか…。」

(この位置で指を動かしている理由なんてホロウィンドウを操作していること以外あり得ないでしょう。)

「ホロウィンドウ?? なんだそれは…、聞いたことないが…。その‘透明な窓’とやらがそこにあるのか?」

「え!? ええ、そうです。なぜあなたに見えないのかは、分かりませんが…。」

「そうか…。」

 フィリアはホロウィンドウの操作を再開した。

(彼にホロウィンドウが見えないことは、とりあえずおいておこう。とにかく、この世界の情報を集めないと…。)

 フィリアは再度検索エンジンを使い、この状況についての情報を集めようとした。

…が、手元のウィンドウには、‘SYSTEM ERROR’の文字。

(まっ!! まさか! こんなところまでバグの影響が!?)

 不安になったフィリアは他の機能を確認し始めた。

(アイテムストレージ欄は…大丈夫ね。アイテムも文字化けしたりはしてない見たい。キャラクター欄も…大丈夫。この2つがエラーで動かなかったら、装備の着脱が出来なくなったりするからデータが破損してなくて良かったわ。…よし、ステータス欄も大丈夫見たい。HPやMP、防御力の情報が破損していたら戦闘で不利になるところだった。)

 フィリアの目の前でホロウィンドウが現れたり消えたりする。もちろん、長髪の男には見えていない。

(ギルド欄、コミュニティ欄、メッセージ欄は全部駄目ね。これじゃあ知り合いと連絡取れないじゃない! スキル欄は…所々駄目になっている? いや、今までのスキルが駄目になっているわけではない見たい。…っは!! も、もしかして増えている?? 今までのスキルの間に文字化けした新しいスキルが入っているのかも。でも、そんなアップデートが入るなんて聞いた覚えないし…。)

 慌ただしく機能の確認を始めたフィリアを長髪の男は呆れた目で見ていた。

(ブック欄は…操作方法のページは開ける。あらすじのページは…駄目ね。開くことはできるけど文字化けしてる。クエストが書いてあるページも駄目。アイコンが文字化けしてるわ。マップは…エラー表示か…。ここまで悲惨な状況になるまで放置するなんて運営はなにをやっているのかしら…。)

 その他の機能も同じように一通り確認したフィリアは結果を運営に報告しようとメニュー画面を開いた。

 そして、なんのためらいもなくGMコールをする為のアイコンがあったはずのところをタップしたのである。文字もなにも書いてない空白を…。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ