妖精と…
□妖精とゲームのルール
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目を開けるとフィリアはどこかの屋上に佇んでいた。
晴れ渡る青空。清々しい風。
「で、ここはどこ? 死後の世界とかではないわよね…。」
フィリアはまわりを見回そうと、歩き始めた。
左手のほうには大きい屋敷が、右手のほうには赤いハートをモチーフにした城が見える。
「やっぱり、知らない場所だなぁ…。」
現実世界でも仮想世界でも見たことがない場所に一人でいるにもかかわらず、フィリアは落ち着いていた。
(私が望み、そして、望まれる世界か…。)
フィリアは反対側を見てみようと足を進めた。
「えぇっと…、あれはテーマパーク??」
遠目でも観覧車やジェットコースターが確認できる。
(そういえば昔、遊園地をモチーフにしたマップがあるオンラインゲームがあったなぁ…。)
フィリアは呑気にまわりの景色を見回す。
「……っ!!」(人の気配!)
フィリアは振り向き、臨戦態勢に入るために腰の愛剣に手を添えた。
「はぁ…、帰れと言っただろう。どいつもこいつも人の忠告を聞かない…。」
そこには、仏教面をした長髪の男が立っていた。
「まったく…、あの芋虫め…! 2人目だと!? ルールを何だと思っているんだ…。」
男はフィリアを睨みつつ、吐き捨てた。どうやら男は苛ついているようだが、フィリアに敵意を持ってはいないようだ。
(良かった、ぎりぎりまともそう…。死体と間違えてしまうような登場の仕方してないもんね。よし! ここがどこか聞いて見よう。機嫌悪そうだから、答えてくれそうにないけど…。)
「すみません、私ここがどこだか分からないんです。教えていただけませんか??」
とりあえずフィリアは下手に出て、愛想の良い微笑みを浮かべた。効果があるかどうかは分からないが…。
「はぁ……。」
長髪の男はもともと寄せられていた眉をさらに寄せ、深々とため息をついた。
(うっ、効果無し…。やっぱり教えてくれないか…。)
フィリアが諦めかけた時だった。
「ここはハートの国にある時計塔の屋上だ。おまえは聞いたことがないと思うがな。」
長髪の男は眉を寄せたまま答えた。
「あっ、ありがとうございますっ!!」
フィリアは笑顔を浮かべ、左手を振り下ろし、ホロウィンドウを開いた。
(よしっ! マップ名が解れば、検索エンジンを使って状況を調べることができるわ。)
慣れた手つきでホロウィンドウを操作するフィリアを眺めていた男は怪訝そうな顔をした。
「おまえ、そこに何かあるのか?」
「えっ!?」
フィリアは手を止め、驚いた表情で男と手元のホロウィンドウを交互に見つめた。