妖精と…
□妖精とデスペナルティ
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「長かった…。」
ユリウスと別れ、時計塔の長い階段を降り終えたフィリアは段差に腰を下ろし、ため息と共に呟いた。
(これは…、精神的にキツい…。)
降りても降りても同じ風景。窓も高い位置にあるため、外の風景をみることも出来ない。
所々物置のような部屋があるものの、屋上とユリウスの作業室があった階、そして今いる一階以外の構造はほぼ変わらない一本道で、ループのトラップにはまってしまったのではないかと疑ってしまうほどだ。
(羽が使えたら楽だけど、羽は回復しないし…。)
サラマンダーとのエアレイドと不思議なマップで羽の力を使い果たしてしまったのだ。フィリアは自分の視界の右端にある赤く光る羽マークを見てもう一度ため息をついた。
(…普段より羽が回復するのが遅い。この店までも歩いて行くしかないか…。)
フィリアは重い腰をあげ、ユリウスが書いてくれた地図を手に歩きだした。
数分後、フィリアは人通りの多い道に出たが、行き交う人々を見てフリーズした。
(こんなの…酷すぎる…。)
彼等には顔が無かったのだ。わかるのは表情と視線。それ以外の個というものが全く無い。それだけではない、個が薄いだけであればモブキャラとして使われることもあるかもしれないが…。
『ID 13:53:21』
フィリアの視界にキャラクターネームとして表示されるのは数字のみ。服装や身長はそれぞれ異なっているものの、顔の判別がつかず機械的に数字で区別されているようだ。
(彼らがこの世界のNPCなのね…。)
フィリアはふたたび歩きはじめた。
「ありがとうございました〜!」
個の薄い店員に笑顔で見送られ、フィリアは店の前で地図を広げた。
(まず現在地を特定して…。)
フィリアはユリウスに書いてもらった地図と買った地図を見比べ、現在地を特定しようとしていた。
しかし、フィリアは気がついていない。ユリウスが紹介してくれた店とフィリアが入った店が別の店であることに…。
フィリアがいたのはGPSやナビゲート機能が充実している時代。VR世界でも似たような機能があったため、紙に書かれた地図を読み取る能力は必然的に低くなる。フィリアはユリウスが紹介してくれた店よりももっと遠い店に行き着いていたのだ。
そうとも知らずフィリアは遊園地へ行こうと歩き出す。ユリウスの説明を聞いて一番情報を集めやすいだろうと考えたのだ。まったく見当違いの方向ヘだが…。