妖精と…
□妖精とゲームのルール
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落ちる。堕ちる。墜ちる。
フィリアは暗闇の中‘おちて’いた。重力に逆らうこともせず、ただ‘おちて’…。
(死ぬって、こんな感じなのかな…。)
フィリアの心は凪いでいた。VR世界で、模擬的な死は何度も体験したことはあるが、フィリアにとって死はとても身近なものだったからだ。
強い風が吹いた。まるでフィリアを拒んでいるかのように。少し落ちる速度が遅くなったようだ。
(まだ…、死にたくない…。)
フィリアは覚醒していく。
「私はまだ 、死にたくない!!」
フィリアは背中の羽根を広げ、重力に逆らっていく。目指すは頭上の光だ。
「あの光まで届けば…!」
行ってどうするだとか、届くわけないだとか考えない。風を切って、ただがむしゃらに…。
しかし、フィリアの思いも届かず、羽根は光を失っていく。システムによって定められた滞空限界を迎えたのだ。
「くそっ! もう羽根の限界かっ!!」
フィリアはまた落ちていく…。
ーーー『帰れ! おまえはこの世界の人間ではないだろう!! 』ーーー
ナイトメアとは異なる声が聞こえて来る。
ーーー『帰れ! 今ならまだ帰れる。帰れなくなる前に帰れ!! 』ーーー
声と共にフィリアを拒む風が強くなる。
ーーー『帰れ!! 』ーーー
(無理よ。もう羽根が使えない。あとはもう落ちるだけ…。)
ひときわ強い風が吹き、フィリアの周囲の闇が晴れていく。どんどん明るくなっていくまわりにフィリアは目を閉じざるを得なかった。