妖精と…

□妖精とワンダーワールド
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 現在時刻17時30分。人々が徐々にログインし始め、町が活性化し出すころ、上空では、1人の妖精が逃走を試みていた。

「あぁもぅっ!! しつこい!! 1人くらい逃がしてくれてもいいじゃない!!」

 緑色の髪をしたシルフの妖精―フィリアは、羽を震わせながら、背後へ怒鳴った。

「金とアイテムを置いていくのなら、見逃してやる。」
「えぇ〜、殺ろうぜ〜、久々の女じゃねぇか。」

 後方の妖精たちはそんな物騒な会話が繰り広げているが、このような状況はよくあることである。何せこの妖精を追跡しているのは、フィリアたちシルフと対立しているサラマンダーだ。

「悪いけど、金を渡して命乞いなんてする気は無いし簡単に殺されてたまるもんですか!!」

 フィリアはサラマンダーからなんとか逃げ切ろうと懸命に羽を震わせる。

「威勢がいい奴は嫌いじゃないぜ。だが、ちょっとばかり運が悪かったな。」

 こちらが1人なのに対して、向こうは3人。明らかに不利だ。さらに感覚的に羽が後数分程で使えなくなるだろう。相手の残り時間がどのくらいかはわからないが、こちらの羽が使えなくなれば、負けることは確定する。しかし、シルフ領までは後十分くらいかかる。

(仕方ない。あんまり好きな方法ではないけど…。)

 フィリアはおもむろにポーチからアイテムを取りだし……背後に向かって投げた。

「くっ!煙玉か…!」

 フィリアが投げたアイテムは後ろで爆発し、異様な臭いを撒き散らしつつサラマンダーの行く手を遮る。

(残念でした。煙玉ってだけじゃないんだなぁ、それ。)

 先ほど投げた煙玉はフィリアの特別製だ。この辺りに生息している人食い蛾の好きな匂いを発生させることができる。

「あなたたち全員道連れにしてやるんだから!」

 もうすでに蛾は集まり始めている。

「まさか、お前…、*MPKをするつもりか?!」
「そのまさかよっ!」

 フィリアは方向転換させてサラマンダーに斬りかかる。

「ふふっ、これであなたたちも無事では済まないわ…。」

*MPK:フィート上に存在するモンスターを故意に集め、プレーヤーを殺すこと。
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