従順な支配者がゆく!

□2,
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今日も女を一人消した後、家路についた。

家に近付くと、空気がざわついた。
不穏な空気に対して、胸が躍ったのは戦いに身を置いていた者の性というか。

家に入る為に扉を開けると、
左側にブーツの底が迫ってきた。
頭で考える前に体が反応しブーツを回避して、すぐさま反撃体制に入る。

うわぁ、良い蹴り。

相手を確認する暇も無く、繰り出される蹴りを左手の甲で防ぎ、下から膝蹴りをすると間一髪で避けられる。
地に足を着ける前に足首を掴まれ、バランスを崩す。
足を掴まれたまま空中で回転しながら脇腹に蹴りを入れる。
綺麗に入ったのにビクともしないとか。

この人、相当デキルな。
私の蹴りを食らってビクともしないし、蹴った場所は鋼かという程硬い。

体制を立て直す為に跳び下がる。
そこでやっと相手の姿が見えた。
暗くて暗い影程度だけど、そこまで大男じゃない、むしろ平均より小柄な。
無駄の一切ない洗練された動き。

いいね、惚れ惚れするよ。
また息も吐く暇のない激しい攻防が始まる、
コートの胸ぐらを掴まれ膝蹴りをされる瞬間、相手の肩をつかみ地面を蹴り頭上で一回転すると、背中合わせの状態になった。
肘で側頭部を殴りつけようとするが防がれる。
男が振り替える勢いで頭を踵で打ち据えようとするのを顎を反らして避けたら頬にかすった。

「チッ」

そこでやっと男が口を開いた。
まぁ、舌打ちだが。
スイッチが入ったのだろう。
さっきまでとは比べ物にならないくらい動きに切れが出て1つ1つの攻撃が重くなった。

しかし、不思議だ。
恨みを買うようなことは数えきれない程しついるから殺そうとされるのはよくあるが、
この人には殺意が感じられない。
、男
むしろ、面白がるような雰囲気がある。

なんて考え事をしていたのがまずかったのが、一瞬隙ができてしまった。
それを見逃さずに足払いを掛けられ、床に背中から倒れ込む。
引っくり返って倒れる勢いのまま左足を蹴りあげるが掴まれ地面に押さえ付けられ、
あっという間に足を使えないように馬乗りになられる。
首を狙って伸ばした右手は素早く掴まれ、
その間に取り出しておいた暗器を右目に突き付ける。
同時に男も私の首を掴み、頸動脈に指を食い込ませてきた。

「はっ、」

「抵抗するな」

目にナイフを突き付けられているにも関わらず
少しの動揺もせずに男は淡々と口を開いた。

「抵抗するなら殺すぞ。」

「じゃあ、私はあなたの右目を潰すよ?


        なーんて。」

ナイフを下ろし遠くに投げ、
降参の意味を込めて体から力を抜く。

「まだ死にたくないしね。」
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