中編2

□だって、君は花だから
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「さあ、今日もれんしゅっ・・・!?」
「ちょ、危なっ!」
午後練の為にダッシュで部活に向かい、いつものように部室のドアをばーんと開く。
開いた直後、段差に足を引っ掻けつまずきそうになった。

「はー、ビックリした。忍足君、ありがとう。」
倒れる寸前で後ろから私の腹部に腕を回して支えてくれたのは、

「・・・呑気やな。毎日毎日ご丁寧に違う方法で転んでくれるおかげで、こっちは反射神経よくなったで。」
「うん!忍足君、いつも受け止めてくれるもんね。頼りにしてます!」
氷帝の天才、忍足君。
彼はいつも私のピンチを救ってくれるヒーローなのだ。
今日だって、説教しつつ、しゃあないなぁ、と許してくれる。

「みょうじさんはほんまにあぶなっかしくて目が離せんわ。
・・・でも、俺の前でしか転んじゃあかんで?」
「いや、わざとやってる訳じゃないからそれはちょっと・・・。」
「それもそうやな。せやったら、ずっと俺のそばにおってや。」
「いや、それもちょっと・・・。」
授業とかあるから、とかえすと、照れなくてもええんやで、と色気満載の笑顔で言われた。
彼はいつもこの調子なので、私も彼のこういった態度には慣れてしまった。
友人がこれを聞くともう倒れそうになってしまうのだから慣れとはすごい。

「ん?どうしたん?そない可愛ええ顔して。」
「いつもと同じ顔ですが!?」
「当たり前や。俺のみょうじさんはいつも可愛ええんやからな。」
・・・それでも、彼のいきなりな冗談には未だに対処法が思い付かない。

「あ、あのっ!顔近いよ!!」
ずいっと近づいてきた彼に訴えるも、

「その可愛ええ顔を近くで見たいんや。・・・あかん?」
彼は、微笑む。
ダメに決まってる!と言おうとした私の背後から、突然気配が現れ、私の肩に乗っていた忍足君の手を掴んでいた。

「忍足、俺様のものになにしてやがる。」
あーん?と無駄にいい声でそういう彼は、

「跡部・・・今日はえらい早いな。」
氷帝テニス部部長の跡部景吾君だ。

「珍しく生徒会の仕事がなかったんでな。」
「誤算やったわ。跡部がおらんうちにみょうじさんといちゃつこうと思っとったのに。」
「はっ、俺様に抜け目はねえんだよ。」
「ふ、二人ともっ・・・!!」
私を挟んで言いあいを始めた彼らがこのままにしておくと長くなりそうなので部活の準備をするよう促した。
すると二人は静かになったので、ほっ、と一息ついた・・・けど。

「なまえ、忍足と二人きりになるな。何されるかわかんねえからな。」
ぐいっと腕を引かれて跡部君に抱きとめられる。
彼が着ている制服からは上品な匂いがするし、服の上からでもわかる筋肉質な体にドキッとした。

「ちょっ、あの、跡部く、」
「何言っとるんや。跡部の方が十倍は危ないわ。・・・ちゅーか、さっきの俺のもの発言はおかしいやろ。」
不満そうな忍足を笑う跡部君の声が耳元でして、軽くパニックに陥りはじめる。

「あーん?どこがだ?いずれ俺様のものにするんだ、問題ねえだろ。」
「ありまくりや!」
ああ、誰か助けて、と願いながら彼らの会話を大人しく聞くしかない私。
そんなときに、

「・・・お前ら、なにしてんだ?」
願いを神様が叶えてくれたのか、宍戸君が呆れ顔をして立っていた。

「宍戸君っ!!」
忍足君がヒーローなら、宍戸君は救世主だ。
 

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