何度巡っても

□雨
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キリトが死んでから何十年と経った。




今生きているのは俺とクソ眼鏡だけ。





そしてどうやら俺ももうそろそろらしい。





「リヴァイ……もう、いーよ。私も疲れた」




俺が寝ているベットの隣に座っているよぼよぼの老人。





「……先に、いく」





老人にそう伝え、目を閉じる。





無機質な機械音が鳴り響いた。





それを合図かのように泣きわめき始める周りの人間たち。




「…………お疲れ様。私もすぐいくよ」




老人の言葉はあまりにも小さく、誰にも聞き取られることはなかった。





「っく、っ、ハンジさん、ありがとう、ございました。父も安らかに、眠ることができました………っ」




一人の男性が老人の手を取り病室へと送る。




「なぁに、腐れ縁だからねー。あいつも幸せだろうなぁ、こんなに沢山の人に囲まれていけるんだ。」





「………っはい。ハンジさんのお陰です」





男性は先程眠ったあいつとよく似た顔でふにゃりと笑う。





「そうかい。おっと、ここまででいいよ。ありがとう」





「では、ハンジさん、また明日」





はいはい。



手を振り、病室へと入る。






「よいしょ」





まったく。
年をとるのは不便だ。




あの人類最強と呼ばれた男でさえ、寿命には勝てないのだから。




馬鹿にするように笑い机上の写真へと目を向ける。






写真の中にはかつて一緒に仕事をしていた仲間達。




「キリト、リヴァイ。神様は私達に何をさせたいのだろね…」






何度も何度も輪廻を巡らせ、何度も何度も同じような人生を送らせる。





「………さて、そろそろいこうかな」






ベットに横になり布団をかぶる。





「次に期待するよ………………………………」





静寂を裂くように甲高い音が鳴り響いた。
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