10萬打リク作品
□タヌキとの攻防
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恭弥が戻ってきた。
草壁が定期的に様子を見に行っていたし、差し入れだってその度に託していたから心配はしていなかったけれど見慣れてきた屋敷に黒くて丸い頭がひょこひょこと動いているのが目に入るというのは、存外ルルーシュを落ち着かせた。
急に現れて恭弥に喧嘩を売ってきた金髪男は、リボーンのかつての弟子であり綱吉の兄貴分で、そして今回の指輪を巡る争いにおける恭弥の家庭教師であるらしい。
ハンコをもらいに行ったら応接室には誰もいなくて、目撃情報を追って屋上にいけば恭弥と戦っていて、しかもその得物である鞭を手元に引き戻すときに持っていた書類を吹き飛ばされたことを根に持っている訳では決してない。
ないのだが、どうにもルルーシュはあの男に対して冷たく振舞ってしまうし、折角の修行であるのにそう頻繁に首を突っ込むというのも気が引けたせいで彼らのもとには一切顔を出さなかったから、結果的に恭弥と顔をあわせるのは随分と久しぶりに感じてしまう。
「おかえり、恭弥」
ただいま、と普通に頷いた彼はまぁいたるところに擦り傷をこさえて服もぼろぼろであったから、感慨もどこへやら、速攻で風呂場に直行させた訳だけども。
(昨日の晩に速攻で寝てしまっていたのは疲れが溜まっていたからだろうな・・・)
クロームの引き取りについて来てくれたはいいが帰宅するなり沈没していたと思しき家主を思い出して、悪いことをしたと眉を寄せる。
どうせ今日の戦いなどあっさり勝ってすぐに戻ってくるのだろうし、彼の好物を作って待っていてやろうか。
明日には恭弥が戻ると聞いてやる気を漲らせている委員たちのおかげで今日は下校時刻に自分があがっても支障はなさそうであるし、そうすればスーパーの特売にも間に合うだろう。
これは、うん、
「いい考えだ」
「は?」
「あぁ、すまない。独り言だ」
うっかり考えていたことを口に出してしまって草壁に不思議そうな顔を向けられながら、もう一度ルルーシュは頷いた。