10萬打リク作品

□未来を臨む、今を望む
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とうとうやってしまった


身体を襲った軽い衝撃とピンクの煙の向こうの悲鳴に、まず思ったのはそんなことだった。
度々ランボがやらかしているのを横目に見ながら、一体どんな仕組みなのだかと首を傾げることはあれど自分があたるのは回避してきたというのに。


(やはり書類を持ちすぎだったな)


ここ最近筋トレの成果が出てきたのか前よりも重いものを長い時間持ち運べるようになったのが嬉しくて、前が見えない程の量を一気に応接室に運ぼうとしていたのが敗因だろう。
綱吉の回避を促す叫び声が聞こえても、とっさに身動きがとれなくて次の瞬間には見慣れた薄ピンクの煙に包まれてしまっていた。
確か、この攻撃を受けてしまうと10年後の自分と5分間だけ入れ替わるのだっけか。

薄れてきた煙の向こうに見えるシルエットは、なるほど並盛でよくみかける生徒たちとは頭身が違っていて大人のものだとわかる。
さて、問題は彼らが未来の自分にとっての味方であるかどうかである。
幻術の師匠でもある骸経由で密かに拳銃は肌身離さず身につけているものの、本職に比べればまだまだな腕前で、身の安全を図るには些か不十分。


「う”ぉぉい・・・この煙、確かボヴィーノの」


しかし、煙が晴れるより先に耳に届いた声にルルーシュは構えていた銃を元に戻した。
一度聞けば忘れられないこの馬鹿でかい声が聞こえたということは・・・


「うっせぇドカス」

(やはりか)


鈍い音と不機嫌な声。
晴れた煙の向こう側に、吹っ飛ばされたらしいスクアーロと、こちらを見下ろすXANXUSがいた。
10年後なので勿論姿は知っているものとは違ったけれど、この男を見間違う訳がない。


「・・・」


その性格は(少なくともスクアーロに関しては)変わっていないようだが、さてなんと呼びかけるべきか。
見知ったものより大人びて落ち着きすら窺える顔つきは拒絶の色を浮かべていないのに、どうにも気安い言葉を躊躇わせる。

口を開きながらも逡巡してみせたルルーシュに、けれど暴君はどこまでも暴君であった。


「はっ、今も昔も代わり映えしない奴だな」


低い声でそう言いながら、無造作に腕を掴まれ引き起こされる。
勢いが強すぎてXANXUSの胸へと飛び込む形となったルルーシュを難なく受け止めると、彼はものすごく自然な動作でひょいと彼女を担ぎあげた。
あれだ、休日の父親が娘にやるみたいな奴。


「ほぅわっ!ちょ、おい!XANXUS!」

「うっせぇ、騒ぐな、落とすぞ」

「落とすな、降ろせ!」


ばしばしと頭を叩いて抗議するルルーシュとそれを気にも留めずにヘリに向かうXANXUS。

それを一歩離れたところで見ていた他のヴァリアーの面々は思わず顔を見合わせる。


「なんていうか、」

「あのボスさんにあんな態度で出れるのは、あいつだけだろうなァ」


他の人間がやろうものなら、次の瞬間には消し炭しか残るまい。



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