10萬打リク作品

□地獄へようこそ
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あの世には天国と地獄がある。

八大地獄と八寒地獄に大別され、更に272の細かい部署に分かれた地獄では、生前の行いが裁判にかけられ、天国行きか地獄行きか、地獄ならばどの地獄かが審判される。

地獄の責め苦は亡者に生前の行いを反省させ、次の生への準備をさせるためにある。
となれば、その亡者はその世界産でなければならない訳なのだが・・・


「どこだここ」


赤と黒、鉛色に重く垂れ込む所にあって異彩を放つ真っ白い衣装に身を包んで、ルルーシュは首を傾げた。

悪逆の名に相応しく無駄に税金を使い込んで作られた最高級品質の死装束はどう足掻いても場違いで、私服だったり白い着物だったりを着ている周辺の者の好奇の目を集め放題である。


(ゼロ・レクイエムは成功した、よな?うん、スザクに見事に串刺しされたし、ナナリーが泣いてたのも覚えてるし。
なら、ここは死後の世界とかいう・・・)


向けられる視線を一切ガン無視しながらつらつらと考え込む。

人は死んだらCの世界にいって集合無意識に立ち返るというのが実際のシステムであり、世界各地における死後の世界の伝承は単なる空想に過ぎないはずだ。
だが明らかにこの場は、かつて立ち入ったCの世界とは大きく様子が異なっているし、そもそもあの世界には基本他者は存在できない、そういう概念の場である。


ならば、ここはどこだ


浮かび上がる疑問を、しかしルルーシュはあっさりと明後日へと放り投げた。


「まぁ、どこでもいいか」


考えたって分からんものは分からん、なら考えるだけ無駄だろ、というか正直もう暫くは頭動かしたくない!なんなんだよブリタニア、あんな杜撰な管理でよくもまぁ今まで財政破綻しなかったな!あ、だから引っ切り無しに戦争してたのかふざけんな節約節制を学べ愚か者どもめ、何でシリアスに迎えるべき最後の日まで今後の国の運営方針の骨子まとめたり暫定予算組んだりせないかんのだ私の睡眠返せ!


まさかのパレード一時間前まで事務処理に孤軍奮闘していたなんて誰も思うまい。
まさかここまで色々ダメな国だったとは、正直シュナイゼルの暴走としか思えないダモクレス作戦が出てきた理由が分かってしまってしょっぱい気持ちになった。


こんなの1人で処理し続けていたら、そりゃあ恐怖政治の方が楽かもーとか考えるわ


賢帝時代に多少改善してはいても、悪逆時代は対シュナイゼルでそれどころでなく、というかそれ以降は表立った善政が執れずに秘密裏な動きばかりだったので流石のルルーシュであってもまともなレベルに持ち込むのには骨が折れ、土壇場にもつれ込む羽目になった次第である。

しんみりと己の人生であったりを思い返して浸るどころか、妙なテンションに突入してしまっていて、ルルーシュは嬉々としながら手渡された白い着物に着替える。
渡してきたのが明らかに異形の鬼であったり、それが確か日本固有の存在であったりといった違和感を総スルーしてしまったのは、確実にこのテンションのせいであった。



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