一万打リク作品

□仮面舞踏会前夜
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アッシュフォード学園の名物はと聞かれれば、誰もが迷わず「ミレイ会長のイベント」と答えるだろう。
定期的な学校行事に留まらない彼女の思いつきで突如開催されるイベントに慣れてしまった生徒たちは景品にされる様々な特典の魅力もあって概ね好意的で、あまりに頻繁な勃発に教師も諦めて受け入れている。
唯一毎回イベントの根回しやら準備やらに忙殺される副会長を筆頭とした生徒会役員たちが不満を言ったり思い留まらせようと頑張ったりもするが、
気乗りしない風を装いつつも、全員本当のところはミレイの暴走に楽しんでつきあっているのである。

そして今回唐突にミレイが企画したイベントは、「仮面舞踏会」であった。



「いつも言いますけど、準備も大変なんだから思いついたその場で生徒全員に告知するのやめてくださいよ」

相当な人数を誇る学園の全生徒職員が参加する舞踏会の実施のために、料理の手配やら音響・照明の調整やらに奔走したルルーシュは疲れたようにそうこぼした。
なんとか当日までに間に合う目処がたった現在は、ミレイ・シャーリーと共に生徒―特に女生徒―たちに斡旋するドレスのカタログを作成中である。
裕福な子女が集う学園とはいえ、今回のコンセプトは「中世宮廷風」なので一般家庭の生徒はもちろん夜会に参加することが多いものでも相応しいドレスを用意するのはなかなか骨が折れる。
わざわざ誂えさせる訳には行かないが、まさか単なるイベントで生徒会の予算を使い尽くすことも出来ないと頭を悩ませたルルーシュは劇団からレンタルすることで活路を見出したのだ。

色とりどりのドレスの画像に目がちかちかしてきたシャーリーは休憩〜と大きく伸びをして机に突っ伏す。
言いだしっぺのミレイもそれにつられておっさんくさい仕草で肩をまわした。
始まる前から疲れている彼女に、一人淡々とノルマをこなしていたルルーシュが無情な一言を告げる。

「カタログ作りが終わったら配布して、ブッキングなどの調整がありますからね」

年頃の女の子たるもの、趣味趣向は似通うために確実にドレスの取り合いが勃発すると思われる。いっそこちらで適当に割り当てたほうが楽だろうと嘆息しながら、確実に襲い来る面倒ごとに悲鳴をあげたミレイに自業自得と言い放ち、軽やかに最後のキーを叩いた。


「ということでノルマ分は終わったので私はあがりますよ」

「あ、そろそろロロが来る頃か」

「あぁ、一緒に夕飯の買い物をする約束だから」


思い出したと呟くシャーリーに頷いてみせる表情は柔らかい。

この鋭利な美貌を誇る副会長が、一歳年下の弟を目に入れても痛くないほどに可愛がっているのは学園の誰もが知っているためにブラコンとからかう声ももはや小さい。

相思相愛な姉弟の様子は、ある意味イベント並ぶ学園の名物だ。




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