一万打リク作品

□最初の晩餐
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どっしり構えられた門の柱にかけられた「雲雀」の表札。

玄関へと続く石畳の片側には整えられた庭樹、もう片側に敷き詰められた玉砂利に計算され尽くして配置された石灯篭。

更に眼を凝らせばそこそこの広さの池があり、鯉だろうか、ぱちゃんとなにかがはねる音。

特撮のセットかなにかのような、純和風の屋敷。



からからと引き戸に手をかけたところで、家主は客人に呼びとめられた。
なに、と言葉少なく振り返ったところで思わぬ客人の様子にやや眼を見開く。

零れおちるのではないかというほどに大きく眼を見開いて、わなわなと唇を震わせる様子はどうにも彼女らしくない。

先に準備しておくよう言いつけていた副委員長が玄関に向かってくる気配を感じながらも雲雀は首を傾げた。


「どうしたの」

「・・・・どうしたも、なにも!」


なんだこの屋敷の規模は――――ッ!!!!


割とよくあることだが、並盛の町に心の底からの叫びが響き渡った。




デスクワークをこなす代わりに住居を紹介する、そんな契約を結んだ覚えはある、というかその契約しか覚えにない。
こんな立派な屋敷(というか自宅)に同居するなんて聞いていない。

ひとまずは、と案内された居間(ここだけ洋風)のソファに腰掛けながらルルーシュはほとんど動かない無表情のくせして雄弁に不満を露わして雲雀に訴えた。

もとは皇族で、一時期を除き決して金銭に不自由する生活を送っていた訳ではないはずなのに、どこか庶民気質の彼女にとって雲雀邸はデスクワークでは釣り合わないほどの物件と認識されたらしい。

一度叫んだこと以外騒がしくしている訳ではないものの、自分に文句を言い続けるルルーシュに明らかに苛立っていることを察知して草壁ははらはらと様子を窺った。



唐突に呼び出され、雲雀邸の一室を使用できる状態にしろと命じられた時は一体どういうことかと思っていたが、まさか女性と同居するためだったとは。

そこに色恋が絡んでいないことは早々に理解するも、ならば一層雲雀に歯向う恐れ知らずな女性の身が危ぶまれたが、同時に、物騒すぎる気配が漂う雲雀相手にここまで言える人間がいたことに感動する。

扱いが難しく、部下である自分たちでさえ日に一回はトンファーの餌食になるというのにこの女性は雲雀を宥めつつも頑として意見を曲げようとしていない。


「このままではとても契約とはいえない」

「何が不満なの、物件探してたんでしょ」

「確かに探していた。しかしここに住まわせてもらうとなったらデスクワークでは釣り合いがとれない。私とお前は対等であるはずなのに、これでは圧倒的に私が得をしている。フェアじゃない」

「・・・・」


考え込むように雲雀は俯く。

草壁からすれば、天上天下唯我独尊の独裁者・雲雀が他人の意見に耳を傾けている時点で仰天ものである。
会話からすると人手が足りていない事務方として雲雀がスカウトしてきたようだ。

みたところ外国人のようだが、契約に対してあちらは非常に積極的だという。

事なかれ主義の日本とは姿勢からして異なり、あまりに有利過ぎる内容であればかえって己を馬鹿にされているように受け取るらしい。





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