一万打リク作品

□甘く優しく愛おしく
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「女子会をいたしましょう!!」


全ては黒髪の姫君の唐突な思いつきから始まった。



どうにも気さくな日本最後の皇族は、蓬莱島の民間人たちのところにもよく遊びに行っていたらしく、そこで“女子会”なるものの存在を知ったらしい。
男子禁制で赤裸々に語り明かして親交を深めるという内容をいたく気にいったカグヤはすぐさまそれを実践することにした。


彼女が選んだメンバーは4人。

友人であり、妹のようでもある中華連邦の天子―麗華。
大人の女性そのもので密かに憧れる科学者―ラクシャータ。
三人官女の一人であり謎に満ちた自称共犯者―CC。
そして大本命のゼロ―ルルーシュ。

どこかのお祭り好きな生徒会長に酷似したパワフルさに押し切られて、彼女たちはカグヤの私室に集ったのである。



「わぁ・・・!カグヤの部屋、初めて来たわ!!」

ふかふかとしたベッドに歓声をあげて飛び乗るという、年相応の無邪気さを示した天子を微笑ましく見守りつつメンバーはそれぞれ思い思いの場所に腰を落ち着けた。
チーズ君を抱きかかえたCCは天子と同じくベッドに座り、カグヤはカーペットに転がったクッションを数個重ねて居心地良く整え、ラクシャータはずりずりと引きずってきたソファをまるまる陣取って横になる。
無礼講と銘打ってあるからか、本当に好き放題しているのに嘆息しながら、ルルーシュは菓子とお茶を盆に載せて運んだ。
彼女がお菓子作りも得意だとばらされたせいで、女子会に饗されるスイーツの担当にされたのだ。ただでさえ忙しいところに舞い込んだそれに口では散々文句を言ってはいたが、実のところ嬉々として作成していたのをばらした張本人・CCは知っている。


ベッド組とソファ(付近)組が手を伸ばせる位置に持ってきていたテーブルにそれらを置けば、天子とカグヤがわっと声をあげる。

艶々としたフルーツが宝石の様に盛りつけられたプチタルトに、市松・渦巻き模様のクッキー、
目移りするほどに可愛らしいプチフルール・・・。(それだけでは文句をいうだろう誰かさんのためにやや離してピザまである)

跳ねるようにベッドから降りてテーブルに駆け寄ってきた天子は、その中に見慣れたものを見つけて驚いたようにルルーシュをみた。
それに気がついて、悪戯っぽくルルーシュは微笑む。

「馬拉米羊(マーラーカオ)まで・・・・!」
「点心や杏仁豆腐は定番すぎるかと思いましてね」

蒸篭の代わりに炊飯器を使って作った蒸しパンは中華の一般的な菓子である。
宮中に押し込められていた天子は贅をこらした味気ない宮廷料理の菓子よりも、彼女を憐れんだ女官たちが時折作ってくれた素朴なそれが好物なのだと星刻から聞き出したルルーシュとしては、思惑通りに驚きつつも嬉しそうにお礼を言った天子に内心ぐっとガッツポーズだ。
似たような悪戯はもう一個あって、その対象者であるラクシャータも珍しく稚い笑みを浮かべてオレンジ色のケーキを1つ手に取った。

「これ、もしかしてハルワ?」
「人参のな。アレルギーでもあったりするか?」
「まさか!!・・・ほんっとーに、ゼロってば面白いわねー」

インドの家庭菓子のハルワの他にも、アジア地域のお菓子たちが定番のスイーツたちにまぎれており、それを見つける度に誰かしらが反応する。
ヨーロッパ圏の人間であることは間違いないCCは見知らぬ菓子に首をかしげつつ、時折それらの説明を求めて結果的に普段に比べれば随分と長く会話を続けていた。


お菓子の力、偉大なり。



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