短編

□2015年ルルーシュ誕生祝い!
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「忘れているようだが、もう夕飯の時間は過ぎているぞ」

「…へ、」

「減ってない、と言うのは認めない」


へこんだグリフィンドールを更に地面にめり込ませたいのか、辛口にも過ぎる採点をしている大人気ない大人。
夕食の席で見かけなかったので気になって来てみたら案の定だ。

怒るより先に呆れてしまい、ルルーシュは持っていたバスケットをテーブルに運ぶ。


「厨房を借りて作ってきた。
とりあえずスープくらいは口にしろ。
またさっき雪が降っていたから、今夜は冷えるぞ」

「・・・・」


ルルーシュ手製の食べ物と聞くや否や、いそいそとレポートを背にテーブルに移動するセブルスである。
胃袋の掴まれ具合は深刻だ。


魔法瓶―こちらでその表現を使うのはなんだかおかしな感じだと、毎回ルルーシュは変な顔をして蓋をあけるのだが、
ともかくそこからカップに注がれたスープを大人しくセブルスは手に取った。

レポートから引き離してしまえばこっちのものである。
骨は取り除き済みの煮魚や、甘辛く味付けされた佃煮。

一度口にしてからしばらく衝撃に固まっていた白米がバスケットから取り出されると、もう男の口から「腹は減ってない」なんて言葉は出てこなかった。

無言で食べ進めるセブルスは、おそらくホグワーツ城の中でルルーシュに次いで箸の使い方に長けているイギリス人だろう。



まくまくと箸と口を動かしているセブルスをなんとなしに観察していたルルーシュは、この男もずいぶんと毛艶がよくなったと感慨深く思った。

出会った当時、6年前は、厭世感を漂わせた顔色の悪い、べったりとした切りっぱなしの髪の毛を束ねもしていないような奴だったのに。

同寮生たちの噂を信じるなら、今では「ちょっとドキドキしてしまう魅惑的な大人の男性」の代表格とか言われているらしい。
ここでホグワーツ1の色男とか言われない辺りが個人的にとても好印象だ。


そんな少女たちの仄かな憧れを向けられるところのルルーシュの義父は、綺麗に料理を平らげて「ゴチソウサマ」までしてからふっと彼女の方をみた。

何かを訴える目に、無言でルルーシュはもう一本の魔法瓶を取り出す。
呼び寄せた湯のみに注ぐのは温かいお茶である。
紅茶ではない、麦茶だ。


どうしてこの男は、アフタヌーンティー以外では紅茶も珈琲も好まないくせに、和食のあとに麦茶がないと不満を訴えるのだか。

そして訴えるわりに自分では常備しないんだか。



呆れを含む視線から逃げるように、セブルスは湯呑を持って席を立った。




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