短編

□2015年ルルーシュ誕生祝い!
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ホグワーツは冬でも賑やかだと、ルルーシュは大広間のモミの木を見上げた。


教師自ら飾り付けたクリスマスツリーは、人ならざるイキモノたちの笑い声まで聞こえてくる。
魔法契約をのぞいてみるに、召喚の代償は生徒たちの浮かれた陽の気らしい。
無尽蔵といっていいくらいなのだ、是非とも持っていってほしい。
別に賑やかなのが耐えられない訳ではない、アッシュフォードだって相当だったのだから。
ただ、赤い寮の毎日爆発してるみたいな元気の良さが、煩くないわけでもないのだ。


クスクスと機嫌よく手を振ってくる妖精たちに手を振り返してやってからモミの木に背を向けて、本来の目的地に向かう。



クリスマスは家族と過ごすというマグルの世界での常識は魔法族にも当てはまる。

むしろ、マグルの世界では少数となった貴族というものが現役活動している分、社交の場としてより重要視されているといえるだろう。
殊に、ホグワーツ4寮のうち貴族が固まっているスリザリンはその傾向があからさまなほどに強い。

先日養い親が回した名簿に書かれた名前は、ほんのわずかであった。
学年で言えばルルーシュ1人という有様である。


もちろんルルーシュが休暇居残りリストに名前を書いたのは養い親たるセブルスがホグワーツに残るからだ。
帰ってきたり来なかったりと、冬にあの真っ黒くろすけを見かけるのは半々だったが、これから7年はともに過ごせる。
あの男の身だしなみに目を光らすことができると嘯いて笑ったのは、まだ紅葉が残っていた頃だったろうか。


今は基本的に外の景色は白一色だった。


「セブルス」
「教授だ」


訪ねた先では、真っ黒くろすけは山のようなレポートを鬼のような形相で採点していた。
それだけでレポートの提出元は察せる。


この間、クィデッチの試合があったのだ。
前年にグリフィンドールに敗北を喫していたスリザリンの意気込みは凄まじい。
級友たちに有無を言わさず引っ張り込まれたスタジアムでは、ルルーシュは自分の寮がどこだったかをうっかり考え込むほどの熱血ぶりを披露していた。


(まさかシュナイゼルが選手とは思わなかったが…)


まさかまさかの微笑みの貴公子が、あの勝利も何も執着しない虚の権化(のそっくりさん)が、大歓声を背にブラッジャーをぶっ飛ばすビーターである。

目にしてもなお信じ難く、思わず叫んだ。
ばかな、か嘘だろ、かそんなことを。
周りが興奮状態で聞き咎められなかったのは幸いだろう。


あの世界とこの世界で重なる人が、似てはいるが別人だとは分かっていた。
だがそれを完全に理解して納得して、割り切ることができるようになったのは。
それを素直に思えるようになったのは、間違いなく棍棒を握ったシュナイゼルのせいである。

因みに結果はスリザリンの勝利。
静かに粛々と興奮状態の続く寮生たちに捕獲されたクィデッチメンバーはしばらく大変そうだ。
そしてその興奮状態が伝播していると思われるのが、目の前の真っ黒くろすけなのだ。




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