短編

□いつかのMerryChristmas
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流れでもともとは関わりのなかった裏社会で生きることとなったのにどこかイキイキとしている変わり種(これを言うと自分自身にも当てはまるため、彼と自分とを似た者同士だと彼女は評する。否定はしない)に、僕はふと疑問に思って尋ねた。


「でも、珍しいね。彼女ふわふわもこもこしてるの好きだけど、機能性ないものなんて買わないのに」

「機能性がないなら、な」


意味深に言葉を切って無造作に拾い上げたきのこを彼がひっくり返した時、僕は彼が言いたいことを十二分に理解した。

見慣れたものには発見しやすい、十字と薔薇のサイン。
彼女が懇意にしている発明家が彼女のために手を入れた品物に残すものだ。
この発明家の説明は一言、マッドサイエンティストで足りる。


「改造済みなんだね」

「ばっちり全部な」


彼が拾い上げたそれは、登録音声以外に反応して記録する受動系道具なだけまだ可愛い方なんだそうだ。
それでも記録をもとにパーソナルデータがあらゆる媒体から検索され保存され、いざという時に流用されるとなったら決して可愛いとは言えないが。


「あ。恭弥、きてたのか」


ようやく製作が終わったのか、はたと顔を上げたルルーシュに気付かれる。
本当に楽しそうだね。


「結局これ何人分だよ…」

「ぼやくな。いいじゃないか、いちいち全員に配らなくても匣のおかげで済むんだし」

「まさかどこでもドアが可能になるなんてね…」

「あのマッド、どう考えてもやり過ぎだろ」


どこでも、という訳でなく対のところに移動するのだから、むしろ四次元ポケットなのだろうか。
いずれにせよ、あの発明家は自重を覚えないとネコ型ロボットを作り出しかねない気がする。
あのネコ、実際は耳に痛いことを言うわけだがいたらいいなと思うのは自分たちの世代共通の願望じゃないだろうか。

手早く匣を使ってプレゼントの山を送り出したルルーシュは残った2つの包みを持って立ち上がる。それに合わせて僕も、真も、後手に持っていたものを前に出した。

意外そうな顔をしないでよ。
僕たち、これでも身内には甘い性分なんだって諦めはついてるんだから。


「「「merry Christmas」」」


年々規模が大きくなっている君のプレゼント攻撃は、来年はどんなものになっているのか。
それを待ち遠しく思いながら、今夜を楽しもう。
呼んでないのに何故かいる、骸たちや白蘭の待つ部屋へと導くためにルルーシュの手を取って、僕と真はにやりと笑う。





「あちらの彼らは」
「ざまぁみろ、って奴だ」



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