短編

□いつかのMerryChristmas
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 謎のきのこ
 ふわもこしたクッション
 間の抜けた表情のぬいぐるみ
 何に使えるのか不明な置物
 カラフルなキャンドルず


まとめると雑貨と呼べるものがひと山ある。
横にはマフラーにセーターにニット帽に…と毛糸製品の山。

そしていま、三つ目の山になるんだろうものをせっせと製作しているルルーシュは、とてつもなく楽しそうだ。


「ねぇ」

「なんだ」

「…どうしたの、これ」

「あー…、まぁ、」


そんな姿を少し離れたところで見ていた真に話しかける。
彼は言葉に迷ったように口を閉じて、頭の回転が速い彼にしては珍しい姿になんとなく愉快な気持ちになった。

これが、他の人間が対象で聞いたのが自分でないのならふてぶてしさ満点に相手をからかった挙句聞いたことに答えないのだろうから、彼の渾名は的確なものだ。
そうは言っても可愛いらしいその呼び方を、彼を憎む側が使うっていうのは滑稽だけれど。


「あいつ、株やなんやで冗談みたいに金があるけど使わないだろ」

「だね、しかも更に節約するから減らないし」


勤勉で優秀な倹約家で、リスクを避ける資産家というのは本当に冗談のような財産を有してしまうのだと、彼女を見て学んだ。
本人曰く、テロリズムもとい革命には潤沢な資金が何より必要だったから磨いた技術で、誰にでもできること、らしい。

どうして自意識は決して低くないのに、妙に自覚が足りないんだろうね、この人。


「自分のために使う気はないが、他の人間のために使うとなると一気にタガが外れるらしい」

「…お金だけじゃないあたり、早々にこちらにやってきたのって大正解だね」

「同感だ」


他人のためなら自分の全ても惜しみなく豪快に切り売りする、その思考回路ってよく考えなくても背筋が凍るほどに危ないもので、それを唯々諾々と甘受するような世界なんて縁を切って当然である。

というか、よく切らせた。

たとえ手段が人攫いに近くても、反動で攫った本人が元の世界に戻れなくても、この馬鹿がこうして憂いなく過ごしていることに比べれば些細なことだと真は言う。

きっと同じ立場なら僕もそうしたんじゃないのかな…あぁ、並盛のこともあるから、なんとしてでも最終的には戻るだろうけど。
攫われた本人以外の誰もがそう納得するほどに、あの世界は傲慢だったし強欲で、その名を冠する暗殺者たちにまで嫌がられるほどの浅ましさだったのだ。



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