短編

□トンファーに愛を込めて
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§ § §


「どうだった?」


わくわくとした様子を隠しもしない声が小さくなった骸の背中を追っていた男にかかった。
振り返ってみると予想通りにきらきらと目を輝かす恋人と、どことなく不安そうな無表情を貼り付ける彼女の同居人の姿。


「・・・骸、帰ったの」

「黒曜の方角じゃない。あのまま行くなら公園か?
日向ぼっこでもするんだろう、そのまま黄昏れるとみた」


さっくりと骸の行動予測を口にしながら、店員にオーダーを告げる。
胸焼けしそうな甘い名前だったが、本人は全く気にしていないようだ。


「らしくもなく弱気になるな。
私と星刻がついているのだから、必ずお前と骸をくっつけてみせよう」


自信満々に言い放った背後に黒いマントの幻影を見た気がする。
まぁ概ね同意見であるのでなにも言うまいと、ルルーシュの隣で星刻は一つ頷いて見せた。


「以前にクロームから聞いた感じだと、あちらも恭弥を意識していない訳ではないはずだからな」

「そりゃ、その他の奴と同じ扱いだなんて許さないけど」


それを避けるために見かける都度攻撃をしかけている雲雀である。
黒曜戦の時はムカつくばかりで、指輪争奪戦の時であっても再戦したい獲物でしかなかったが、そもそもが無敵無敗でやってきていたところに初めて黒星をつけた相手なのだ、そこには並々ならぬ執着があった。

それが不倶戴天の敵となるか心奪われる相手となるかは雲雀次第であった訳だが、結果は諸々の戦い・経験を経たことで後者となり、さくっとそれを見抜いた他人ついては鋭いルルーシュが恋のキューピッドを買ってでたのだ。

自分ですら困惑する感情の芽生えに途方に暮れているのに、同性であることなんて気にもしない大らか過ぎる同居人のなんだか暴走気味の応援に呆れつつも、大人しくその作戦に従う男二人である。


ベタだが、『偽の恋人を装って動揺させる』というのは本音を聞き出すためにはかなり有効的な手段だ。
しかも頑なな相手の本心を吐き出させるのにかけてはかなりの実績を誇る星刻相手である、予想通りに骸はぺらっと限りなく本音に近いところまで喋ってしまっていた。


「妙に自己評価が低いから、あちらから動くことは恐らくないように思ったな」

「予想通りだ、私達の処に特攻するくらい単純な性格にはみえないもの」

「ネガティブ思考が強い相手には誤魔化しなしの直球勝負が一番だ」


経験則か?経験則だ

と生真面目にアドバイスしてくる二人に、雲雀はとうとう腹をくくる。
うっかりトンファーまで出したのは愛嬌だろう。


「行ってくるよ」


散々思い悩んで振り回されたのだから、相手を手に入れなければ割に合わない




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