短編

□ちょっと一息
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「ルルーシュさんは、お兄ちゃんと知り合いなんですか?」


クロームを連れたお兄さんと一緒に現れた時のイメージが強かったんだろうか、なんだか落ち着かない様子でそう尋ねた京子ちゃんに、何故か悪戯っぽく目を細めるルルーシュ。


「・・・恋人かもって思ってたりするか?」
「え」
「ええっっ!!!」


思わず京子ちゃんと同じタイミングで俺も叫んでしまった。
その場の視線が向けられているのは分かるけど、でも、いや、叫ぶのも無理ないと思う!


(お、お兄さんとルルーシュさんが?!でも確かに連れだって・・・いやいやそれは偶然合流したからだって言ってたし!)


わたわたと動揺してしまうのは、俺の中で勝手にルルーシュの隣は雲雀さんなイメージを作ってしまっていたからなんだと思う。
なんというか、どっぴーかんに明るくて、“ファミリーを明るく照らす日輪”を地で行くお兄さんとルルーシュは対極的というか、ルルーシュはむしろ、晴れていても曇っていても、いつでも空にあるー・・・月、みたいな人だと、思う。


いや、だからってお兄さんとルルーシュが恋人同士なのはおかしいとかそんなんじゃないんだけど!!


叫んでしまったものの、その後の言い訳に困ってあわあわする俺を暫くルルーシュは面白そうに眺めていたんだけれど(ちょっと10年の月日を感じた瞬間だった、俺の知ってるルルーシュならこんな場面で俺の反応で楽しんだりしないもの!)、ハルが不思議そうに俺にどうしたのか尋ねてくるまでになって、やっと口を開いてくれた。


俺に向けられていた京子ちゃんの視線を、彼女の頭に手を置くことで自分に向けてルルーシュは自分の発言を否定する。


「混乱させて悪かった、私と了平は単なる仕事仲間。そんな色っぽい関係じゃない」
「あ、ごめんなさい!私、つい・・・」
「でも」


ここで、ルルーシュが笑みを深める。
次の言葉に俺たちはぽかんと口を開け、女子はきゃーと歓声をあげた。


「了平にはちゃんと可愛い彼女がいるよ」
「え!本当ですか!!」
「どんな人ですか?ハル達が知っている方なんでしょうか!」
「あんまり未来のことを教えるのはよくないから、詳しくは言えないけれど。未来の君達とも仲の良い彼女さんだ」


きらきらと目を輝かせる京子ちゃんに、果敢に質問を繰り出すハル。
爆弾発言に硬直する男組を置いてけぼりに、女子のテンションはぐんぐんと上がっていって、正直もう俺たちが質問する隙がどこにもない。
・・・・お、お兄さんの彼女って、一体どんな人なんだろ。絶対にただものじゃない気がする、だってあのお兄さんだし。


「10代目・・・あの芝生頭に、って本当でしょうか・・・・」
「こんなところで嘘言う理由もないし、本当なんじゃないかなぁ・・・」


複雑そうな顔をしている獄寺君とは対照的に山本は気を取り直したのかいつもの笑顔でこっちを見る。


「そんな余裕なかったから考えもしなかったけどさ、ここって10年後なんだな!」
「何を当たり前に今更なことを言ってやがる!!」
「いや、そうじゃなくて。未来なんだよなー」
「今まで分かってなかったのか野球馬鹿が――っ!!!」
「獄寺君落ち着いてー!」


山本の発言に吠える獄寺君を宥めながら、俺もちょっとひいた顔で山本を見てたんだけど、当の本人はからから笑う。


「ほら、小学校の頃とかに“未来の自分へ”みたいなことを書いたりするじゃねーか。隣の席の奴とかは彼女いますか!とか書いてたなって思い出したんだよ」
「あー、あったねぇそういうの」


そして自分の作文は巨大ロボットになりたいとかだった気がする。



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