短編

□骸誕生日お祝い
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「まぁ、オーソドックスなパーティーメニューなら・・・、」


ぱらぱらと料理本をめくりながら唸る。
風呂場からは水を嫌がる犬が騒ぐ声が聞こえるが、壁を壊さない限りは黙殺しておく。
見張りに千種もいるのだし、大丈夫だろう。
クロームは傍でじーっと本を見つめている。

ケーキはチョコレートケーキに決めているらしい。
なんでも骸はチョコが好物なのだとか。


別に知っても得にはならない骸情報を入手しながらメニューをどうするか考えていると、
ここ最近ですっかりなじんでしまった気配が背後に立つ。
あ、と声をあげるクロームを無視して、彼は当然のような口ぶりで言い放った。


「ハンバーグがいい」

「・・・おかえり恭弥」

「ただいまルルーシュ。で、ハンバーグがいい」


本当に好きだな、ハンバーグ


献立を聞いて三回に一回は聞かされる彼の好物にやれやれと肩をすくめた。
風呂場の騒ぎに眉をひそめるものの、制裁に向かわない程度には機嫌のいいらしい恭弥に、
あぁ何個か群れを咬み殺してきたんだな、と悟りつつクロームに眼をやる。


「ハンバーグでいいか?」

「え・・・」

「ここで作って黒耀に持っていけば確実に冷めるし、途中でなにかしらの事故が起きる可能性も高い。
ここでパーティを開けばいいだろう」

「でも・・・・」


窺うように見る先は当然、恭弥。
パーティーの主役が骸であるのだ、途中でクロームから変化するだろうし、そこで暴れられたら台無しである。


「恭弥、今日は骸の誕生日らしい」

「へぇそうなんだ」

「お前のライバルが生まれた日な訳だ」

「ライバルじゃなくて獲物」

「めでたいよな」

「・・・・はぁ。そうだね」

「そう言う訳だ、安心しろクローム」

「???」



ルルーシュは知っている。

存外この男が周りが思うほどに骸を嫌ってはいないことを。
仲は悪いが、嫌いではないのだ。
考えてみれば当然で、同等にやりあえる相手がいなかったところに現れた得難いライバル―彼風に言えば獲物―なのだ、
借りを返したあともやりあいたい相手には違いない。

興味がないようなそぶりをするが、生活空間に骸の仲間を受け入れている時点でそれは明らか。
多少、小動物的な扱いになっている気がしないでもないが、特にクローム。





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