短編

□わたしの”幸せ”
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「やがてルルーシュ様は限界を向かえて倒れられました。
それでもナナリー様には絶対に悟られない様にふるまわれて・・・・それで私、とうとうキレてしまったんです」

「は・・・・?お前がか?」


あまりにこの女に似つかわしくない言葉に呆気にとられた。


「いつまでも強情をはって、しかもこちらが黙るしかないほど完璧にこなされてはメイドの立場がございません。
しかもナナリー様どころかルルーシュ様のお世話さえ拒まれる理由がイレブンへの嫌悪ではなく申し訳なさだなんて知ってしまいますともう、
ひそかに日本人だというプライドを掲げている自分が情けなくもなります」


これはルルーシュ様には秘密ですよ、きっと覚えてらっしゃらないので。
とわざわざ口元に指を立てる仕草をして、咲世子は言う。


「熱を出されたルルーシュ様を看病している時に、
“自分たちに人質としての価値がもっとあれば、日本が侵略されることなどなかったのに”と。
確かにあの方々は皇族でいらしたけれど、まさか年端もいかない子供にそんな責任を問う訳がありませんのに、ルルーシュ様はそれを気にしていらしたのです」

「・・・・・10歳でか」

「はい10歳です」


それは確かに大人として立つ瀬がない。
口の端を引きつらせているヴィレッタを余所に咲世子は笑って言葉を続けた。


「口で説得しても素直になる方ではなかったので、私はルルーシュ様が倒れられている間にナナリー様のお世話を行い・・・簡単に言ってしまえば外堀を埋めさせていただきました。
そして、それから7年ずっとルルーシュ様が必死になってナナリー様の姉として、そして母代り父代わりとして接しておられるのを見続けて。
人種も何もなく言葉をくれる、この優しい方の力になりたいと思ったのです」

「・・・・、見ていて危なっかしいからな」

「ええ」



ヴィレッタは得心した。
自分がルルーシュを支えたいと思ったように、きっと咲世子も思ったのだろう。
人種を問わずに感謝を告げる、必死になにかを守る、でも本当は非力なただの子供であるルルーシュだから。


「・・・私は、幸せになりたかった」

「幸せでしょう?」

「あぁ、幸せだ」


全てわかったように微笑む咲世子にこちらも微笑む。
結局自分は存外戦う人間だったらしい。
守られるよりも守りたいのだ。

守りたい人が笑ってくれるーそれがあの中華連邦の男のおかげだとは思いたくないがーなら、それでいい。


それでいい、だから。


「千草!!」
「私はヴィレッタ・ヌウだ!!」



ひたすら無力な女を求める男に、私は吠えた。
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