短編

□わたしの”幸せ”
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共に秘密裏にエリア11を脱して蓬莱島へと向かう咲世子を横目に窺う。
流石はシノビということなのか、ヴィレッタはこの女の顔色が変わるところを数える程しか見たことがなかった。

(・・・あぁ、あの時も、そうか)

今も読めない笑顔を浮かべたまま窓から外を眺めている。
思いきって口を開いた。


「咲世子。お前は、なぜルルーシュに仕えている」

こちらに顔を向けた咲世子は、小さく首を傾げた。
質問の意図が分からないのかもしれないと思い、言葉を足す。

画面の中、クナイを構えて向かった顔は厳しく勇ましかった。


「・・・お前はイレブン、いや日本人だろう。
それなのに、迷いなくルルーシュの為にジェレミア卿に向かっていったから」

「敢えて言うのなら、ルルーシュ様だからです」


穏やかに彼女は言葉を紡ぐ。


「敗戦して日本人の立場は一気に地に落ちました。
そんな中で生きていくには名誉になるほかなかった・・・・。
私は心に日本人という誇りがある限りたとえどなたに蔑まれようと構いはしませんでしたし、
篠崎流を雇っていた桐原公もそれを咎めはしませんでした。
そうしてお仕えしたのがアッシュフォード家でございます」

「理事一家か」

「はい。あそこも、他のブリタニアの方に比べれば大変理解のある方々が多く、ことのほか私はミレイ様のお気に召したようでよくお世話をさせていただきました。
そうしたこともありまして、ルルーシュ様とナナリー様、特にナナリー様の介護の役を申し付かったのが出会いですね。
その頃にはルルーシュ様もミレイ様と打ち解けていらして、その紹介であった私もあまり警戒はせずにおられたようです」


ただ、初めの頃はナナリー様の介護には一切携わらせては戴けませんでしたが。


と苦笑気味に続けられた言葉を聞き流しかけて、ぎょっとした。
確かアッシュフォードにルルーシュが引き取られたのは10歳のときで、その時妹は7歳。
この頃の子供の体格差などあまりない。
そんな妹の介護を、要するにルルーシュは一人でやっていたことになる。
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