10萬打リク作品
□親愛なる、
2ページ/5ページ
「ハンカチに刺繍をしたら?」
「ハンカチ?」
「刺繍?」
不思議そうに首を倒したのはルルーシュとドラコ。
一度選民思想を振りかざした発言を、よりにもよってルルーシュの前でやらかしたある意味勇者の彼は、滅多に笑わぬ彼女に微笑まれながら延々「いかに自分がみみっちくもくだらない存在になり下がる発言をしたか」について諭され叱られるという体験を経て多少考えを改めたらしい。
この時の体勢は正座on石畳。
悟りを開けるほどの環境である。
マグル生まれを意味なく蔑まなくなれば、ハーマイオニーとの関係は鎬を削る首席次席の関係。
その埋まらぬ差の一因がルルーシュとの勉強会にあると知ってからは度々こっそりと参加しているドラコである。
「だってどんな人でも持っていて、普段使いもできて、それでいて一工夫できるものっていえばハンカチだと思わない?」
「まぁ、よほど身嗜みに気を払わない人間でない限りは持っているものだな」
例えばウィーズリーとかでなければ、と続けた言葉には諦め混じりの一瞥が飛ぶ。
両親からしてあの仲の悪さだし、ロンも大概な偏見で物を言っているのでハーマイオニーは2人の悪口の応酬に関しては基本中立であることにしているのだ。
それはさておき、彼女の案は素晴らしいものではないだろうか。
ハンカチ自体は入手が簡単だし、そんなに凝った意匠にしなければ1日もかからず刺繍も仕上がる。
家事能力のカンストした自分には朝飯前だ。
晴れ晴れとした顔で、ルルーシュはなにやら薬草学のレポートをドラコと見せ合っているハーマイオニーに礼を言った。
(善は急げ、早速材料を入手しなくては)