合縁奇縁
□その10
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エリ子対策も忘れて音を立てて扉を開けると、お盆片手に今まさにコーヒーを渡した格好でこちらをぽかんと見ている誠志朗につかつかと寄っていく。
「な、どうしたんだよア・・・リぃぃ?!」
「エリ子さん、こいつ借りていきます」
有無を言わせず腕を鷲掴み、再びドアへと足早に向かう克也にエリ子はそれまでの苛立ちをひとまず横に置いて尋ねた。
克也が戻りしなに自身の机の上に置いてあった御神鏡をひっつかんでいるのを見て、仕事関係だと察したのである。
「鈴男君になにかあったの?」
その言葉に、訳が分からず克也に文句を投げていた誠志朗がぴたりと黙って克也を見上げた。
この春から同僚になった柊一とは元々なんだかんだと腐れ縁に交流のあった誠志朗は彼のヤミブン入りを裏表なく喜んで歓迎した一人であり、ちょっとのこととはいえ年下の彼の精神的に危なっかしい様子を心配していたのだ。
無言で自分の答えを待つ二人に、克也は1つ息を吐いた。焦っていたつもりはなかったが、彼らにこんな顔をさせるようではダメダメである。
「確信じゃありません。もしかすると、ってだけです」
「でも、坊やが必要だと思ったのね」
鋭い指摘に黙り込む。
そう、“探知に優れた”誠志朗と御神鏡が必要だと自分は直感的に感じた。
つまり
「・・・・・・もしかすると、鈴男も神隠しに巻き込まれたかもしれない」
そしてその出口は隠されていて、御神鏡が鍵になる。
呪いの対象をナニカの力を借りて異界に飛ばす、そんな術式を今回の事件の術者はベースに組み込んでいたのだと、克也は柊一に伝えようとしていたのだ。