合縁奇縁

□その5
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立海大付属高校の敷地は広い。

それは中高大の三キャンパスが一処に集められているためなのだが、例えば単に“正門”とだけ言ってしまうと中学の?高校の?
それとも大学の?と外部の人間は首を傾げることになる。


ついでにいうと、これほど隣接していてしかも持ちあがりなのだから共用しているかと思いきや、部活動の練習場所はそれぞれ個別に設けられている。
実績の少ない部活は中高でひとまとめにされているそうだが、知名度ナンバーワンのテニス部は当然の如く高校専用のコートで練習していた。


笹井から問題なく御神鏡を受け取った柊一は、そのような立地事情を、克也にうっかり正門で待つようメールしたことと共に
げんなりと思い出す。


現在地:高校の正門前

克也の姿は、ない。


そして柊一の携帯がブーブーとかけてきた人間の不満を表すように震えている。
取りたくない、と顔にでかでかと書きながらも柊一は携帯を耳にあてた。
あちらは先輩、こちらは後輩。
いつだったか鼻で笑った上下関係が己に適用される日が来るとは半年前まで思いもよらなかった。


「・・・・はい」
『どこで油を売っている』
「・・・・・・」


予想通り過ぎて怒りすら浮かばない嫌味に、がっくりと肩をおとす。
あの悪目立ちする真っ赤なオープンカーは、大学の方の正門に止まっているらしい。


「今すぐそっちへ行きます」
『・・・わかった』


沈黙は、再び他人行儀になった柊一への苛立ちやら自分への困惑やら全てひっくるめての怒りのこもった三点リーダーだった。
もっと長々と噛みつかれるかと身構えていた柊一は、短く応えてさっさと通話を切った克也に首を傾げながらもくるりと方向転換する。


大学なら、テニスコートの脇の森を突っ切ればすぐに辿りつけるはずである。
単に学生として通っていた時には一度も目を通していなかった学校の地図を、今回の任務に伴う復学できっちり暗記した柊一の足取りに迷いはない。
だができれば中学側であってほしかったと詮無いこととはいえ思わずにはいられなかった。


なにせテニスコート脇の森は、件のお稲荷さんが祀られた場所なのだ。
そこへ割れた御神鏡を携えて接近するのは、何の対策もしていないだけに不安を感じる。




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