春、君に出会う

□一目惚れ
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楓が初めて彼に出会ったのは入学式のときだった。











楓は体育館に向かう途中皆とはぐれてしまい校内で迷ってしまった。
この学校は広すぎるのか、なかなかたどり着くことができなかった。






「どうしよう…入学式、始まっちゃうよ……」









もう皆体育館に集まっているのだろう、校内に人気はない。








入学早々遅刻など絶対したくない。
その場にいても仕方がないので歩き回っていた。








…さっきから同じところを歩いているような気がする。








自分は方向音痴ではないはずなのだが…と諦め掛けたその時だ、






前方から人影がこちらに近づいて来たのがわかった。










「あ……」









その人は真っ赤な髪にとても整った顔立ちの男の人だった。








「ん…?君、新入生だよね?こんなところで何をしているんだ。もうすぐ式が始まるはずだが…」







「あ、あの…」








上靴の色がちがうということは先輩だろう。








「わ、私迷って、しまって……」








緊張で声が震えてしまう。



すると、くくっと笑い声が、聞こえてきた。








「なっ……なにが、おかしいんですかっ」







彼の意外な反応にちょっとムスっとしてしまった。







「いや、ごめんごめん。体育館は真逆の位置にあるんだ」







「へ………。」





まさか真逆の位置にいるとは…










「君は方向音痴のようだね。まぁ、この学校が広すぎるせいもあるんだろうけど…。まぁいい、じゃあ僕についておいで案内するよ」








先輩の言葉は嬉しいが、初対面の、しかも先輩にそんなことをしてもらうわけにはいかない。








「え…そんな、大丈夫です…迷惑をかけるわけにはいきません」









楓が遠慮の言葉を述べると彼は困ったような笑みを見せた。








「いいからほら。でないと遅れてしまうよ?…それに君1人じゃたどり着けないだろう?」








先輩のいう通りきっと1人ではたどり着けないだろう…。








「う…、じゃあ…お言葉に甘えて…」








「よし、じゃあはぐれないようにね。」








「だ、大丈夫ですっ」







また先輩はくくっと小さくわらっている。自分をからかっているのだろう。






でも、仕方ないので大人しく先輩のあとを追うことにした。








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