甘い甘美な罠
□キスの我慢は辛い
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付き合うことになってから、早一週間も経った。
あれから珍しく現場が一緒になることはなかった。
だから、今日のラジオ収録が久しぶりだ。
俺の心は、ワクワクしていた。
だって、好きな人に会えるんだから。
打ち合わせに珍しく早く来れた。
打ち合わせ部屋のドアを開けると、そこには先に神谷さんが来ていた。
「おはようございます…神谷さん」
「あぁ…小野君、おはよう……」
顔が赤い。緊張してるのか?
「あの…付き合ってから、初めて会いますね」
「…そういうこと…外で言うなっ!!」
浩史に殴られた。頬を。
少し痛みと切なさが胸と頬に伝わる。
「すいません。俺が悪かったです。配慮もしなかったんで。」
「……痛かったか?」
「はい。ついでに心も痛いです。」
今にも泣き出しそうな神谷さんの頬を撫でようとした時…!
ふと、あの約束が頭に過った。
“5回に1回、キスするの我慢したら…”という約束を思い出した。
俺、今…キスしようとしていた。
俺は我慢することにした。
「すいません…。俺、離れますね……」
そっと神谷さんから離れた。すると、悲しそうな顔をされた。
「そんな悲しそうな顔、しないでください。」
「……してない」
意地っ張りなところがまた可愛い。
でも、そう思ってもキスしたりはできない。約束があるから。
本当に付き合っているのか…不安になってきてしまった。
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