刻む針の果て
□望まぬ出会い
2ページ/4ページ
***
教室について早々、クラスメイトの花村陽介が机に突っ伏していた。
「なーに朝から死んでんの?」
「や…ちょっと、放っといたげて…」
茶髪のショートヘアに緑のジャージを着た女子生徒、里中千枝の明るい声にも花村の声は低い。何て言ったら良いものか。
「あ、奏おはよー」
「おはよう、奏君」
とりあえず教室の中まで入ると、里中と、大和撫子という言葉が似合う天城雪子が振り向いた。
「おはよ」
「花村?」
「おぉ、奏。はよ。雨どうよ?」
「どうって聞かれても……お前は大丈夫か? チャリでスリップして転んだだろ」
「げ!? 何お前、見てたわけ!?」
「いや? お前のチャリだけぐちゃぐちゃだったからさ」
花村が、一瞬絶望的な顔をして、今度こそ無言で机に突っ伏した。