刻む針の果て
□テレビの中
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瀬多総司が転校してきた次の日の放課後、瀬多に花村が声をかけた。
「良かったら帰り飯食ってかね?」
「あたしにはお詫びとかそーいうのないの?」
そこに里中がじと目で2人を眺めて、ついに割っていった。花村がとたんに顔をしかめるが、雰囲気そのものは寧ろ明るい。天城もくすくす笑ってる。
「黒峰、さん。何がオススメ? 俺、まだわからなくて」
「オススメか……俺も詳しくは……まず外食自体しないから」
「あー、確かに」
「そもそもお前、あんま食わねーもんな」
「私もあんまり食べないけど、奏君ほどじゃないかな。あの量じゃ、体力もたないよ」
「そんなに少ないの?」
「つか栄養補助食品だな、ありゃ」
「うわ」
「うわって何だ瀬多」
だって、そもそも食欲が出ない。何となく腹は空くけど、食べたいとは思わない。
「つーことで、帰り寄ってこうぜ瀬多。里中も奢るからさ」
「いよっしゃ! あ、雪子もどう? 一緒にオゴってもらお」
里中と天城はいつも一緒にいるな。それが当たり前なんだろう。別に学生じゃ珍しくもないしな。
「いいよ、太っちゃうし」
「黒峰さんも一緒に行きませんか?」
「……別にさん付けしなくても良いぞ。俺は放課後は時間とれないから」
遊びたいなんて思わない。そんなことよりも、一刻もはやくあの世界に……『テレビの中』に行かなきゃ。