らんま1/2

□疲れたときに欠かせないもの
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「うふぁ〜」



朝から大欠伸かましつつ、俺はいつも通りフェンスの上を歩く。

隣にあかねの姿はねぇ。

日直だからって先に行っちまった。



「ふわぁ〜」



また欠伸。

今日は何だか眠い。

いや、今日に限らず最近はいつも眠い。

原因?

んなの…決まってらぁ。

って、変な想像すんなよ。

あかねと恋人関係になってから、いつも以上に襲われるようになったんでい。


誰にって…だから、あいつらだよ、あいつら!

シャンプーにうっちゃんに小太刀でぃ!

そこに来てあれだ、久能先輩とか、良牙とか…。

ムースはやけに協力的だけど、それでもいつ襲って来るかもわかんねぇし。

っつーか、実際攻撃仕掛けてきやがったし。

それが、朝昼晩代わる代わるやってくる。

逃げては隠れ、別の奴に見つかっての繰り返し。

1週間もこんな生活が続けば、そりゃ俺だって疲れる。

疲れたときって、甘いもん食いたくなるだろ?

今の俺の口の中、完璧にパフェを欲してやがる。

でも、男の姿で行くのは…。

やっぱこういうときゃ女の姿だな。

今日の放課後はあかねを連れてパフェ食いに行こう!

そうだ、そうしよう!









と、思ってたのに…。



「だ〜!いい加減にしろ!!」

「黙れ!外道早乙女乱馬!あかねくんの純潔を………………奪いおってぇ!!」

「今、変な想像したろ!?」

「乱馬貴様!?いつの間にあかねさんの純潔を……………許せーーーーーん!!」

「って、良牙いつの間に!?」

「あかねばかりズルイ!!私のことも抱くよろし!!」

「ぐわーっ、ぐわーっ!?」

「何言うとんねん!?乱ちゃんが抱くんはうちに決まっとるやないか!!」

「ほーーーほほほほ!乱馬様、私はいつでも構いませんわ。さ、奪っっって下さいませ」

「何の話だ!?」



放課後、あかねを連れだってパフェを食いに行こうとしていた…んだけど。

あかねに声かける前に壁割って乱入してきたシャンプーに捕まった。

それを見たうっちゃんに巨大フライ返しで投げ飛ばされ、なぜかいいところにいた小太刀にリボンで拘束され、

木の上に飛び上がったところで追い掛けてきたシャンプーとうっちゃんにリボンをぶち切られ、

その下を歩いていた久能先輩の頭に見事に着地し、久能先輩の怒涛の突きをくらい、

蹴り飛ばしてやっと逃げたところだったんだが…。


追いつかれてやがるし、なんか…ブタ(変身前)とアヒル(変身済)が増えてやがるし!!


「あー、くそ!!このままじゃ拉致があかねぇ…」



その時、バシャッと何か冷たいものにぶつかった。

ぶつかったっつーか、かけられた?

確認なんてしなくても全身はビショビショ。

確実に誰か(何か?)に水をかけられたのだとわかる。



「おさげの女ではないかー。僕に会いに来たんだな。かわいい奴め〜」

「誰がてめぇに…会いに来るかぁ!!」

「ハハハハハ!おさげの女〜!好きだ〜!」



何やらおかしな戯れ事を叫びつつ、俺の勢いのついたパンチ一発で久能が空へと飛んでいった。



「乱馬様をどこにお隠しになられたのですか!?」

「隠してねぇ!!」

「乱ちゃん。うちで服乾かしていったらえぇよ」

「こんなんどうってことねぇって」

「にゃーにゃー」

「ぐわっぐわっ」

「ぷぃぶぎっ」

「んにゃー」

「だー!!もぅ、うっせ………にゃぁ?」



頭の上に何か柔らかいものが乗ってくる。

それは、確かに耳元で「にゃー」と鳴いた。



「あーーーーー!!ねーーーーーごーーーーーーー!!!!!」



後のことなど、もう記憶にない…。












どのくらい逃げ回ったんだろう。

気がついたら、電柱に頭をぶつけて気絶してた。

辺りには誰もいない。

誰もいないどころか、真っ暗だ。



月すら出ていない空を見上げる。
明かりを点すのは、街灯だけ。

しかも、俺がぶつかったんじゃねぇかと思われる電柱には街灯などそもそもついてなくて、俺のまわりは他より一層暗い。



「冷たっ」



月なんて見えねぇわけだ。

見上げてた空から、雫が落ちてくる。

俺の頬に当たって弾けた雫は、そのまま俺の頬を伝って流れていった。



「雨だ…」



今、何時なんだろ?

っつーか、ここ何処だ?

俺はゆっくりと立ち上がる。

自分の位置を確認しようと、暗い道をキョロキョロと力無く見渡す。

雨のせいで、視界も悪い。



「ったく、なんだってんだよ…」



少し高いところへ登ろうかと思ったときだ。

誰かがこっちへ向かってやってくるのが見える。

ふとそっちに目を向けると、そいつが優しく笑った気がした。

さっきまで疲れてしょーがなかったはずで、確かに体が重く感じてたのに、俺はゆっくりと歩きだす。

気がつけば、俺は走り出していた。



「……おかえり、らんま」



「…………ただいま、あかね」



あかねは俺に優しく微笑む。

俺もあかねに優しく微笑みを返す。

疲れきった体に、温かいものが溢れてくるような…そんな感覚。

疲れてるときに欠かせないのは甘いもんだって思ってたけど、ちょっと訂正。

疲れてるときに欠かせないのは、甘いものとあかねの笑顔。

俺はあかねと手を繋いで、天道家までの道を歩いた。




END



聖夜の夜は… 【Side:Akane】


お題提供:よりぬきお題さん。
提供お題:770 疲れたときに欠かせないもの


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