らんま1/2
□可愛い、なんて思ったのは秘密
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俺の許婚はかわいくねぇ。
かわいくねぇどころか、凶暴で不器用でおまけに寸胴。
世間には物好きがいるようで、こんなかわいくねぇ女でも結構モテるんだな、これが。
俺が最初に風林館高校に来た時だって、凄かったもんな。
変態野郎どもがいっぺー襲ってきたっけ。
こんなかわいくねぇ女のどこがいいってんでぇ?
「…ちょっと」
大体だなぁ、こいつは何でも不器用過ぎるんでぃ。
その上凶暴だからな。
力加減っちゅーもんを知らねぇんだよ。
だから料理だってあぁも芸術的にマズイもんを作っちまうんだろうなぁ。
「…乱馬ってば!」
あんなマズイもん食えるような奴なんてなぁ、世界中探したって俺くれぇなんだぞ。
そこら辺わかってんのか?
俺だって食いたくて食ってるわけじゃねぇんだ。
仕方なくだ、仕方なく!
「もう!謝ってるじゃない!無視することないでしょ!?」
バンッと、床がめり込むほどの勢いで胃腸薬を置くあかね。
腹が痛すぎて喋らねぇ俺に、プリプリ怒ってやがる。
アホか!
こんな状況になったのは誰のせいだと思ってんでぃ!!
俺はクイクイと手招きする。
片手はキッチリ腹の上。
顔はきっと蒼白。
俺が腹を痛めてる原因が自分であるという自覚はしっかりあるらしいあかねは、逆らいもせずに顔を近づけて来る。
俺の口元に耳を寄せてきたあかねに一言告げる。
「…ずんどぅ」
「わざわざ手招きまでして言うことはそれかぁ!!」
グシャッと潰された俺に、背を向けるようにしてさっさと部屋から出ていこうとするあかね。
咄嗟に手を掴んで、あかねを引き寄せた。
「らっ…らんっ」
倒れ込んできたあかねを支えて、そっとくちびるを寄せ、乱暴に重ね合わせる。
微かに開いたくちびるから舌を捩込んで、あかねのそれを貪った。
息も絶え絶えになった頃、そっとあかねから離れる。
あかねは顔を真っ赤にしてそっぽ向きやがった。
だから、あかねの顔を掴んで、グイッと俺に向けさせる。
「…何すんのよ、バカッ」
「…顔真っ赤」
「人のこと言えないでしょ!あんただって真っ赤よ!!」
また顔を逸らそうとしやがるから、んなこと出来ねぇようにまたくちびるを塞いでやった。
かわいくねぇ俺の許婚。
不器用で凶暴で寸胴で…。
何でこいつがモテんだ?
こいつがモテなきゃ、変な嫉妬に狂うこともねぇのにな…。
くちびるを離すと、真っ赤になったあかねが恥ずかしそうに小さく笑う。
その笑顔が可愛いと思ったなんて、こいつには内緒だ。
END
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お題[可愛い、なんて思ったのは秘密]
お題提供元:確かに恋だった