らんま1/2

□眠り姫は襲っていいんだ
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草木も眠るらしい丑三つ時。

俺はそっと部屋を抜け出して、音を出さねぇようにソロリソロリと廊下を歩く。

階段を上る音がヤケに響く気がして、余計に慎重に歩き、ある部屋の前で足を止めた。

ドアに掛かれた一枚のプレートを確認する。

ローマ字で書かれたAKANEの文字を見て、ゆっくりとドアを開ける。

もちろん、音が出ねぇように慎重にだ!

中は当然暗い。

そりゃそうだ。

今は夜。部屋の主はぐっすり熟睡中。

そーっとそーっと、起こさねぇように慎重に…。


俺がこんなにコソコソとあかねの部屋に来たのにはもちろん理由がある。

明日提出の宿題を1ページもやっていない事に気付いたからだ。

どうも今日は寝付けずに、さっきまで道場で1人稽古してたから、すっかり気づくのが遅れた。

部屋に戻って寝ようとして気付いたんだよな。

本当はもう寝ちまいてぇんだけど、今度忘れてったら完全に補習が決定だ。

かといって、寝てるあかねを起こしてまで写させろなんて言えねぇ。

だからこうしてコソコソとあかねの部屋に侵入したってわけでぇ。

あかねなら、きっともう宿題を終わらせてっだろうし、ちょっとノート借りるくれぇいいだろ。

暗いっつっても勝手知ったるあかねの部屋だ。

どこに何があるかまでバッチリわかる。

それに、幸いにして今日は満月。
そっとカーテンを開けると、月明かりの入り込んだ部屋はある程度明るくなった。

これなら、宿題を見つけるのも簡単だなと、あかねの鞄を手にしようとした時だ。

ん〜っと、あかねが寝返りを打つ。

ドキーッと、あかねを振り返る。
起きた様子はなく、ホッと胸を撫で下ろした。


が、俺はそのままあかねから目が離せなくなった。

それもこれもあかねが悪い。

寝相の悪さは知ってるが、これはやべぇだろ。

あかねは暑いのか、パジャマの胸元は開いてやがるし、腹はチラッと見えてやがるし、足だって片方捲れあがっちまってて膝の下辺りまで見えちまってるし…。

誘ってんのかてめぇは!?

ドキドキと高鳴る鼓動を抑えつつ、風邪ひかねぇようにと、あかねの下敷きになっちまってる掛け布団を被せてやるべくそっとあかねに近づいた。

とは言ってもどうすっかな?

掛け布団は下敷きになっちまってから引っ張ろうもんなら確実にあかねを起こしちまう。

かといってこのままってのも…目の毒だ。

ついついジッとあかねを見ちまって、疼きそうなナニかを鎮めるためにペシッと頬を叩いた。

かといって、音を出しちまったらそれまた起こしちまうだろうから、強くは叩けない。

モンモンとした気分は晴れぬまま、ウロウロとするしかない。

すーすーと寝息をたてるあかね。
無防備すぎんだろ?



…………………………。



ちょっとくらいなら、襲ってもいいよな?

一応、俺許婚だし。恋人だし。

って、眠ってるあかねにんなこと出来るか!!

やるなら、堂々とだろ!?

……堂々とナニしようってんだ俺は!?


はぁ〜、はぁ〜、はぁ〜。


心拍数が半端ねぇ気がする。

闘ってる時だってこんなに鼓動が速くなることねぇってのに…。

チラッとあかねを見る。

ぐっすり眠っているあかねに吸い寄せられるように、俺はあかねの頬に触れた。

ドキドキと高鳴る鼓動が治まる気配はまるでねぇ。

むしろ、どんどん速くなってやがる。

ちょっとだけ、ちょっとだけなら、いい…よな?

ドキンッドキンッ高鳴る胸を抑えつつ、そっとあかねに顔を近づけていく。


「ん〜…」

「ひっ!?」


寝返りを打つあかねに驚いて、思わず飛びのき天井に張り付く俺。

な、情けねぇ…。

あかねを見ると、さっきまで下敷きにしてた掛け布団を引っつかんで掛け直してやがる。

ガクッと項垂れた俺は、そのままスゴスゴと自分の部屋へ戻った。

宿題のことを思い出したのは翌日の授業中。

俺の補習が決定したかどうかは………言わすんじゃねぇ!馬鹿ヤロウ!!




END



可愛い、なんて思ったのは秘密


お題[眠り姫は襲っていいんだ]
お題提供元:確かに恋だった


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