らんま1/2
□私たち結婚しました
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高校3年。卒業までもうちょい先っつう、とある冬の日。
俺とあかねは無事に入籍し、結婚式をあげた。
本当はこのまま新婚旅行と行きてぇところだが、いくら所帯を持っても高校生は高校生。
冬休みは終わっちまうし、学校がある限りは休んで旅行なんてあかねが許すはずもねぇし。
そんなこんなで、結婚してからも特に甘い雰囲気になるでもなく、冬休み明け登校初日。
俺達は相変わらずいつも通り、いや、いつもより少しだけ余裕を持って登校した。
結婚して始めての登校。
なんだか、いつもの通学路が変わって見える。
隣を歩くのは許婚のあかねじゃねぇ。
俺の奥さんになった、嫁のあかねだ。
天道あかねじゃねぇ。
早乙女あかねなんでぃ。
もうすぐ卒業だし、入籍したことを学校側に告げる気はねぇから、学校に着いちまえばあかねは天道に戻る。
俺達の左手にも、結婚指輪はつけてない。
それでも失くさねぇようにって、あかねが作ったちょっと…いや、かなりいびつな形のお守り袋の中に入れて、今はしっかり鞄の中に収まってる。
いつもはフェンスの上を歩く俺も、今はあかねの隣を並んで歩く。
ちょっと緊張しながら左手差し出すと、あかねは嬉しそうに右手を絡めてくる。
あかねの笑顔に、ちょっとだけクラッとしそうになった。
俺は辺りをキョロキョロと見回す。
よし、誰もいねぇな。
あかねと繋いだ手をグッと引き寄せ、俺の腕の中に収めた。
あったけぇし、柔らけぇし、良い匂いがするし、離せねぇ…。
「ら、乱馬…」
「なんでぃ?」
「…遅刻しちゃうでしょ?」
「まだ平気だって」
「そうだけど…」
あかねの額に自分の額をこつんと当てると、あかねが恥ずかしそうに上目遣いで俺を見上げてくる。
おいおい、反則だろぅが。
そんな目されたら余計に離せなくなんだろうが…。
俺はあかねの顎に手を添えて、ちょっとだけ上向かせる。
そっと目を閉じるあかねに、触れるだけのキスを落とした。
結局いつも通り遅刻ギリギリで教室に入った俺達。
誰かの策略なんじゃねぇかと思う程、何度席替えしても高確率であかねの席の近くになる。
今もなんだかんだで俺の隣はあかねだ。
いつも以上になんだか騒がしい教室。
休み明けだからだろうと思ってたんだ。
こん時は…。
教室に入ってすぐにHRになった。
慌てて席につく俺とあかね。
何だか、教室中から視線を感じる。
なんだってんでぃ一体?
ガラガラと教室のドアを開けて担任の先生が教室に入ってくる。
日直が号令をかけ、朝の挨拶。
面倒くせえとか思ってたら、あかねに小突かれた。
担任がいつものように出席をとりはじめる。
名前を呼ばれてへぇ〜いと適当な返事。
次々に生徒の名前が呼ばれ、あかねの番になった時だ。
「天道。いや、もう早乙女あかねと呼んだ方がいいのかぁ?」
担任がニヤニヤした顔で俺とあかねの顔を見てきやがった。
思わず顔を見合わせる俺とあかね。
途端に教室中からひゅーひゅーと冷やかすような声。
結婚したことは学校には伏せてあるはず…何でバレてやがるんでぃ!?
「なっ…ななななな…何で!?」
「そ…そうよ、何でそんなこと」
「何でって…なぁ?」
「何でって…ねぇ?」
クラス中がいっせいに校庭を指差す。
そこには、バラバラとビラを撒き散らすパンダ姿の親父とおじさ…じゃなくて、お義父さんと、じじぃがいた。
何をやってんだあいつらは〜!?
「乱馬、あかね。はい、これあげる」
「潤弥」
潤弥が持っていた1枚のビラを受け取る。
そこには、ご丁寧にも俺達の祝言の写真と一緒にこう書かれていた。
『早乙女乱馬と天道あかね祝結婚!私たち結婚しました』
載せられた写真は、如何にも俺幸せですと公言してるような、幸せオーラとか見えんじゃねぇかとか思うくれぇ破顔してる俺と、屈託なく笑うあかねの2ショット。
写真の提供元は、まず間違いなくなびきの奴だ。
撮られた記憶が全くねぇのが何よりの証拠でぃ!
「あいつら〜」
手に持ったビラをあかねに押し付け、俺は親父達を止めるために教室を飛び出したのだった。
アトガキ
2人が結婚したら、周囲に内緒なんて絶対に無理でしょうね。
前のサイトに置いていた時は、ビラを渡したのはうっちゃんでしたが、あえて潤弥くんに変更しました。
ニヤニヤしながら渡しましょう(笑)
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