らんま1/2
□やってきた転校生
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【Side:Ranma】
「転校生?」
「そ。しかも女の子だってよ」
「可愛いかなぁ。可愛いといいなぁ」
遅刻ギリギリで教室に滑り込んだ俺とあかねに、悪友のひろしと大介がそんな話を振ってきた。
転校生ねぇ。
「特に興味もねぇなぁ」
「そうだよなぁ。乱馬にはあかねがいるもんな。そりゃ興味ないよなぁ」
「なっ!?別に俺はこんなかわいくねぇ女なんかなぁ!?」
「ぬわぁんですって〜!!」
「な、なんだよ!やるか!?」
「天道。早乙女。痴話喧嘩は後にしろ〜」
いつの間にかやってきた担任が、俺達を窘めるように言った。
クスクスと笑い出すクラスメイトの声に耐え切れず、俺とあかねはそのままイスに座る。
「あんたが悪いのよ」
「おめぇだろ」
と、小声で喧嘩を続けていると、ガラガラと教室の戸を開ける音がした。
その瞬間、聞こえてきたのは男達の落胆する声と、女達の黄色い悲鳴。
何かと思って目を向ける。
あかねも気になったのか、視線を教室の前に移した。
そこにいたのは、俺ほどではないがそこそこ整った顔をした、俺ほどではないが長い髪が印象的な黒髪の、ちょっと変わった和服を着た…男。
これが噂の転校生か。
でも、確か女だって言ってなかったか?
どう見たって男だろ。
「雅潤弥と申します。…よろしく」
キラッと白い歯を光らせてニカッと笑う姿に、女達はまた黄色い悲鳴をあげ、男達は絶望的な悲鳴をあげていた。
休み時間ともなると、転校生は瞬く間にクラスメイトに囲まれている。
主に、女どもに。
「はぁ〜。女の子だって聞いてたのになぁ」
「はぁ〜。噂なんて当てにならんなぁ」
男どもは落胆の声を隠そうともせず、さっきからため息ばかり漏らしてやがる。
「おめぇらなぁ。さっきからため息ばっかうるせぇぞ」
「お前はいいよ、お前は。あかねがいるもんな」
「そうそう。愛しのあかねが側にいるんだから、そりゃ転校生が男でも女でも関係ないだろうがなぁ」
「なっ!?俺は別にだなぁ!あんなかわいくねぇ女なんか!」
「ぬぁんですってぇ!?乱馬ぁ!」
俺の暴言はしっかりとあかねにも聞こえていたらしく、びゅっとイスが飛んでくる。
俺はそれを避け切れず、ガンッと思いきり脳天に突き刺さった。
「何しやがんでぃ、この凶暴女!」
「何よ!この変態!」
「誰が変態でぃ!この寸胴!」
「関係ないでしょ馬鹿乱馬!」
「…乱馬?」
あかねが机を持ち上げて振り回そうとした時だった。
あかねの振り上げた机を制し、俺の前に転校生がやってきていた。
俺もあかねも転校生を見る。
転校生の視線は俺に注がれている。
「な、なんだよ?」
「お前、早乙女乱馬?」
「だったらなんでぃ?」
「無差別格闘流の?格闘と名のつくものには負けたことがないって豪語してるっていう、あの早乙女乱馬?」
転校生は、俺の回りをグルグル回りながら、珍しいものでも見るようにジロジロと無遠慮に眺めている。
なんだコイツ?
喧嘩売ってんのか?
「無差別格闘早乙女流。早乙女乱馬だ!文句あっか!?」
「俺は、霊獣格闘流後継者。雅潤弥。ぜひ、手合わせ頂きたい」
爽やかに差し出された手。
しかし、その目は既に静かな闘志に燃える格闘家の目をしていた。