今日は何の日Project!

□Subject:浴衣
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「ダーリン、可愛い浴衣がいーっぱいあるっちゃ!」



 おかしい。



「花柄も可愛いっちゃ〜。金魚柄もいいっちゃねぇ」



 絶対におかしい。



「ダーリン、どうしたっちゃ?」

 ラムは巻いて来たはずなのに、なぜこうなる。



「…ダーリン?」



 今頃俺は、ガールハントした姉ちゃんと2人で浴衣を選んでいるはずだったのに。


 俺の隣には、ラムがおる。


 俺がデパートに着く頃には、入り口で既にラムが待っておったのだ。


 代わり映えせん相手に、がっくりとうなだれるしかない。


 しかし…。


 俺は改めてラムを見る。


 ラムはいつものスタイルじゃなく、俺の言った通り地球の女と変わらん姿をしている。


 ツノは髪で隠しているので、電撃を出したり空を飛んだりしなければ誰もラムを宇宙人だなどと思わんだろう。


 こういう地球人女性のような格好をしているラムは、いつものラムよりも数倍キレイに見える。


 いつも一緒にいる俺でさえ、ドキッとしてしまう程に。


 計画は多少狂ったが、今回はまぁ良しとしようじゃないか。


 ガールハントの本番は、夏祭りのときにとっておけばいい。



「ダーリン。聞いてるっちゃ?」



 ラムが俺の腕を掴んで軽く引っ張る。


 回りの男どもの視線が、ラムと俺の間をさまよってるのがわかる。


 普段はあんまり意識してないから忘れがちだが、ラムもこれで結構な美人だからな。


 美男美女の2人連れとなれば、俺たちに視線を止めてしまうのも止む得ん。



「だぁれが美男だっちゃ?」

「何!? お前、心を読む能力まであったのか!?」

「声にでてたっちゃよ、声に…」



 俺はどうやら考えていることを口に出してしまう癖があるらしい。


 気をつけねば…。



「それよりダーリン。早く浴衣選ぼっ! 夏祭りは夕方からだっちゃ。早くしないと、夏祭りに行くのが遅くなるっちゃ」

「あぁ。そうだな」



 よくよく辺りを見回すと、そこには色鮮やかな浴衣がずらっと並んでいる。


 定番の紺を始め、ピンク、白、黄色、赤、黒…。


 柄も、花や金魚、鞠にひまわり…。


 選び放題といえば聞こえはいいが、選び放題すぎて逆に何を買えばいいかわからん。


 本格的に着付けなければいけないものもあれば、誰にでも簡単に着こなせるようなものだってある。


 さて、どうするか。


 選び放題とはいっても、それは金に糸目をつけない場合だ。


 最初に確認すべきものは値段。


 悲しいかな俺は一介の高校生。


 財布からいくらでも金が湧き出てくるという訳ではない。


 値段の上限を決めたら、次に確認すべきはどのようなものにするか。


 浴衣か甚平か、本格的に着付けなければいけないタイプか、簡単に着付けできるタイプか。


 女子に受けがいいのは浴衣か甚平か。


 そんなのは考えずともわかるというもの。


 答えは浴衣だ!


 甚平は簡単に着れるが、その分女の受けは悪い。


 夏にだけ、それも夏祭りというイベントでだけ見せる浴衣姿というものは、男の魅力を数倍に引き立てる。


 それは、女もまたしかり。


 今はセパレートタイプの浴衣なんてものも存在していて、浴衣のくせに洋服のように着れるなんてものまであるらしい。


 あれはいけない。


 浴衣の醍醐味は、1枚の布を体に巻き付けるところにあるのだ。


 帯をほどいて浴衣をめくる。


 その乱れこそ重要なポイントであるからして、ここはやはり着付けタイプを選択するべきだろう。


 ここまで決めたら、選び放題だった浴衣の中でも選択範囲は狭まる。



「よし、ラム。着付けタイプで安い浴衣を探せ!」

「…うーん。これはどうだっちゃ?」

「バカッ! こんな高いもん買えるか! え〜っと、ほら、あれだ! 浴衣のセール品!」

「セール品け?」

「文句言うな。選んでやらんぞ」

「わかったっちゃよ〜。でも、かんわいいの選んでね」



 口では文句を言いつつも、楽しそうに弾みながら歩くラム。


 たまにはこういうのも、いいかもしれない。





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