「と言うわけで、あたしが責任を持って余計なことしないようにするから今日だけは通して」
ジェネルが木の扉の前に立つ大男に話をつけている間、ロビンはおとなしくジェネルの後ろで嬉しそうに笑っていた。
「……ジェネル、そいつ本当に無害なのか?」
「他者には今の所無害よ……」
少し辟易した様子のジェネルに渋々男は扉を開いた。
「ありがとう、ガルス」
「気をつけてな。明かりは要るか?」
ガルスがロビンに尋ねれば、一瞬キョトンとした後に首を横に振る。
「僕は大丈夫だよ。ハニーが要るからね♪ハニーの愛さえあれば僕は真っ暗闇でも光って見えるよ!」
「あんたに向ける愛なんて微塵もないわよ……」
「……このいかれた奴を通して本当に大丈夫なのか?」
「……まぁあたしの周りには有害だけど他の人達には無害よ……もうむしろ路地裏に抜けるまでに引き離せないかって考えてる所よ」
痛む頭を押さえながらジェネルの目が段々と据わってくる。
「明かりなく迷ったら、へたしたら野垂れ死にするぞ?」
「これは野垂れ死んでくれるほど優しくないから。とにかく行くわ。こいつは要らないって言ったら本当に要らないから心配しなくて良いわよ。心の無駄遣いよ」
「酷いな、ハニー。でもつれない君はとても素敵だよ♪」
「マゾヒストか?」
「さぁね……じゃぁまた後で。ほらさっさと行くわよ!」
ガルスの言葉に適当に返事を返してロビンのスカーフを力いっぱい引っ張って木の扉の向こうに消える。
「……ジェネルをあれだけ振り回せるならたいしたもんだな」
先ほどのやり取りに苦笑を漏らしながらガルスは小さく呟いた。