『ほな香代はここで義賊が来るか見張っといてなぁ。僕は裏の方を見張っとくしなぁ。義賊が来たら裏にきてなぁ。裏にきたらこっちくるしなぁ』
『解った、あにぃ!』
元気な返事を返す香代の頭を撫でる。
『香代はからくり好きかいなぁ?』
『もちのろんや!からくりも、じっちゃんも、あにぃも皆好きやしなぁ!』
『僕も好きやぁ。香代の作るからくり。幼ぁて、ほんに遊び心が一杯で好きやぁ。これからも一杯作っていかなぁな?』
志助の言葉に嬉しそうに頷いて抱き着く。
『ほな行ってくるよってなぁ』
『ほな後で!』
少し寂しそうに離れて、香代は手を振る。もう一度香代の頭を撫でて、志助は裏へ向かった。
『ほんにあにぃのからくりは凄いなぁ……建物一個潰せるんやから……』
見惚れるように屋敷を見上げる香代は本当に尊敬するようにただ見つめていた。そんな香代のもとにジェネルが現れるのもそう時間がかからなかった。
『あ〜!!馬鹿女?あれ、あにぃは?』
「何言ってるのか解らないんだけど、まずは人を指さない」
自分を指差す香代の手を軽く叩く。
『なにすんねん!』
「あ〜も〜ピーチクパーチク煩いわね!もう一人はどうしたのよ!」
『?』
お互い何を言ってるのか解らず二人して首を傾げる。
「そんなことだろうと思ったわよ……」
どうして良いか判らず、諦めかけているジェネルに聞き覚えのある声が届く。
「……あんた」
「領主様に大まかなこと聞いてたから来てみたのよ」
「変態公爵から?」
「そうよ『香代ちゃん?』」
『なんやねぇさん?』
「『あたしはデュークの闇市の人間よ。レイラって言うの。よろしく。ところで志助くんはどこにいるの?』」
『裏で義賊待つってぇ。会ったら一緒に来る言うててん……でも義賊しかこんくて』
「ねぇあんた、志助くん見た?」
「見てないわよ。見たなら連れてきてるに決まってるでしょ?この子と意志疎通まったくできないんだから」
「そうよね……探してきて」
「何であたしが?」
「この子と意志疎通できないんでしょ?早く」
レイラに急かされて渋々ジェネルは踵を返した。
「領主様が気をつけてって言ってるはずなのに……『あっごめんね香代ちゃん。志助くんは必ず義賊が連れて戻って来るから一緒に待とうね』」
『うん……あにぃ、どうしたん?』
『志助くんは探してるのよ、大切なモノを。香代ちゃんと一緒に幸せになれる方法を』
心配そうな香代の背に手を回して宥めるように撫でる。
『あにぃ』
心配そうな表情のまま、レイラはジェネルが向かった方向を見つめた。