私だけの王子様


□君
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私はいつも見てるだけ。


きっと彼は私の顔やなんて覚えてへん。


彼はテニス部の部長もやっとって、成績は学年トップ。


誰もが憧れる完璧人間(パーフェクトパーソン)


男女問わず、好かれとる。


私やって…。


私は三年間一回も同じクラスになったことあらへんから、ほとんど話したこともない。


ただ一度だけ…。


一度だけ、私は彼と話したことがある。


そん時から、ずっと私は彼が好き。


友達に言うたら、重いすぎ言われたけど、そんぐらい好きなんや。


そんぐらい、あん時の彼の笑顔は輝いてたんや。


二年前、私らが入学してきてすぐん時


私は家庭科室がどこなんかわからんと、学校の中で迷子になっとった


誰かに聞きたかったけど、先生はいいひんし、周りは先輩ばっかりで、どうすることもできひんかっていた。


だんだん私はさみしぃなって、すみにうずくまって、泣いてもうた。


そん時や、


「どうしたんや?大丈夫か?」


頭上から、優しくも強く、少し困惑の混じった声がした。


私は頭を上げて、息を飲んだ。


数ミリ先には、彼の顔があった。


「あっ、すまんっ。」


彼は一瞬で顔を引いた。


少し顔を赤らんどる彼の横顔はめっちゃ美しかった。


つやのあるシルバーブロンドの髪は少し揺れ、彼のたくましさを際立ててる。


私はこの時から、彼に惹かれとるんや。


その後、たわいない会話をしながら家庭科室まで彼は案内してくれた。


家庭科室にあったらごっついい笑顔で名前教えてくれた。


でも、体験入部期間が終わって本格的に部活が始まると、また彼の名を聞くことになった。


それから、しばらくしてまた、聞いた。

中間テスト、“総合第一位白石蔵ノ介”


彼がこんなにすごい人やったなんて。


それまでは、ばったり会ったりしたらニッコリわろてくれたのに、それもなくなった。


まぁ、会うこと自体減ったけど。


なんか、さみしかった。


私なんか釣り合わへんって、わかっとったけど、さみしかった。


私は美術部に入ったけど、窓からはテニスコートが見えて、気づけばいつもその姿を追っていた。


そんな自分がイヤで、諦めようとしたけど、それもできんかった。


そんなまま、もうすぐ中学最後の夏の大会が近づいてきとる。


なぁ、白石くん。
今年こそは全国とってきてや。
そしたら私、君に気持ち伝えるから……。






END

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