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□マンションの中ってさ。
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次の日の朝、
リビングにある玄関の
モニターの音に起こされた。

―――このマンションは
オートロック式なので
モニターから誰なのかが確認でき
そこから鍵の開閉をする。―――


昨日は荷物を部屋に運んだり
マンションの住人に
挨拶まわりをしたり…と
忙しかったので早めに寝たが…
眠いものは眠い。

「…んぅ…」

まだ周りが整理されていない
部屋の中央にある布団の中で
もぞもぞ動きながら
もう、誰だよ…と呟く。

何回かチャイムが鳴る。
俺は渋々、布団から出て
モニターの通話ボタンを押した。

「お早う御座います。
 副管理人の馨、です。」

頭がぼーっとしているため
一瞬、誰かと思った。
…低貧血って辛いなぁ…

「あ、お早うございます…
 すぐ出れなくてすいません。」

大丈夫ですよ、と画面から
明るい声と笑顔が聞こえてくる。
…笑顔、頂きましたーっ!
今日一日頑張れるわ、これ。

「…あの、聞いてます?」
「あっ、すいませんっ!
 …それで何でしたっけ…?」
「お部屋の片付けのお手伝い
 しようと思って。」

…はい?今なんと?
今、片付けとか何とか
聞こえたのは気のせいですよね?

お互いに沈黙し合う。
モニター画面に映る彼女は
困った顔をこちらに向ける。

"画面に映る彼女"とか俺、
ちょっと危ない人になってるよ…


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