白石蔵ノ介

□好きだから
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「なぁ・・・なんでや?」

あたしは今、説教・・・されているのだろうか。

「なにが?どうしたの・・・白石」

「俺、栞の彼氏やろ」

「うん」

部活が終わった後、マネージャーとしての仕事をしていたあたしは、白石に手を取られコートの外にいた。

目が合えば、辛そうな顔をしている白石。

さて・・・どうしたものやら。

「なのに・・・なんで謙也とか金ちゃんたちとばかり楽しそうに話すんや」

「そりゃ謙也は・・・」

「知っとる。自分が氷帝にいた時、よう話してた忍足くんの従兄弟やからやろ」

「・・・金ちゃんは・・・」

「それも知っとる。可愛い後輩やからやろ」

そういえば数日前も白石に呼ばれて、同じ話したっけ。

なんでまた同じ話をしているんだ、あたしたちは。

「俺は栞のことほんまに大好きやで。誰よりも」

「あたしも――」

「それほんまなんか?」

「は?」

全部言う前に遮られてしまった。

今日は一筋縄ではいかないらしい。粘るな、白石ってば。

「いつも栞は口だけやろ。俺のこと名前で呼んでくれたことだってあらへん」

「・・・」

たしかにいつも「あたしも好きだよ」って言ったら白石の機嫌が直ってたから、言って終わってたし。

付き合ってからもあたしはずっと白石って呼んでた。

それはつまり、ちょっと恥ずかしかったりしているだけであって・・・。

『蔵』って本当は呼びたいんですよ、うん。

「あんま言いたないけど、ほんまに俺のこと好きなんか?男除けとかちゃうん?」

プツッとあたしの中で何かが切れた・・・気がした。

「・・・蔵、本気で言ってんの?」

「え・・・―――っ!?」

あたしよりはるかに背が高い蔵相手は辛かった。


背伸びして蔵の襟首を掴み、自分の方へ引き寄せた。

行動で表した方が一番早い。

ちゅっというリップ音を立てた唇。

あたしは蔵の唇を奪ってやった。

「ん・・・分かったか!」

唇と襟首を放して、あたしは言い放った。

「な・・・なな・・・!?」

いきなりのことでびっくりしたのか、蔵は赤面だ。

「あたし蔵のこと好きだよ!じゃなきゃ付き合ったりしないし!名前呼びしなかったのも恥ずかしかったからであって!・・・あたしを信じろ!あたしには白石蔵ノ介って男が必要・・・ってちょっと」


あたしが訴えているというのに蔵はというと感動しているのか目を潤ませている。

「やっぱり俺、栞のこと好きや」

「ち・・・ちょっと!」

力強く抱きついてくる蔵。

あ、いい香りするなんて思っちゃってるあたしはあれか。重症か。

てゆうか、く・・・苦しい。


「愛してんで・・・栞」

「あーはいはい」

面倒な男だな、蔵は。

でもあたしは、そんな面倒な男が大好きだったりする。

「なぁ栞?もっかいちゅーして?」

「いーやーだー!てゆうか放せ!ひっつくな!」

「えぇ匂いするわ、栞。んー絶頂!」


(謙:「栞ってえらい大胆やな」
 金:「わいも行きたいー!」
 小:「ここで金太郎さん行ったらあかんでぇ」
結構陰で見られていたりする)


Fin.
 

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