丸井ブン太
□Deep Blue
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一面に広がる青い海。
キラキラと輝きながら太陽の熱を帯びた砂浜。
空を見上げれば、眩しく照る太陽と晴天。
なんであたしはここにいるのだろう。
立海大附属中男子テニス部。
彼らは何故かこの灼熱の夏に海に来ていた。
まぁ、今にして思えばなんで仁王のお姉様に休日捕獲されて、水着を買わされたのか理解できる。
今日は仁王のお姉様が運転する車で海へと向かった。
・・・一応買った水着は持ってきたんだけど・・・。
ブン太は海行きが決まってすぐに水着は着るの禁止とあたしに言っていた。
なんでと聞けばなんでも!と押し切られちゃって・・・だから水着を持ってきたとバレたら怒られちゃうんだろうな・・・。
その不安も束の間、海に到着した途端にお姉様に更衣室へ連行。
無理やり水着を着せられて、嫌だ嫌だと騒ぐあたしにお姉様はワンピースタイプのパーカーを渡した。
それを着て、既に着替えたレギュラー陣がいるパラソルの場所へ2人で向かっているのが現状。
・・・ブン太は着せたがらなかったもんね、きっと仁王のお姉様でも怒られちゃうもんね。
ブン太はきっと「今すぐ水着から服に着替えて来い!」って言うに決まってる。
背中を押されながら少しずつブン太に近づいていく。
「まーるいくん」
お姉様の呼びかけで振り返るブン太。
「は?・・・・・・・はぁぁ!?」
ほら見ろ、すごい形相で走ってくる。
お姉様が怒られちゃうのは嫌だから、仁王が怒られちゃえ。
もう少しで触れる距離ーーー。
「栞の破壊力に脱帽・・・・!」
・・・・なんかもう、いいや。
「なぁ、水着持ってきたとか聞いてねぇんだけど」
「・・・」
「パーカーに生足とかなに?誘ってんの?」
「・・・」
「もう超可愛いんだけど。栞まじ愛してる」
「・・・」
さっきからずっとこの調子だ。
もう暑苦しい・・・。
「水着何色?赤?赤?ピンクもいいけど」
「ブン太きもい」
「なぁ抱っこしていい?」
「世界的にきもい」
「てか鼻からなんか出るやっべ」
「ほんとにきもいんですけどブンちゃん」
「やっぱお姫様抱っこしていい?」
「ブン太きらい」
「ごめん、俺が悪かった」
一文字違いの強さ万歳。
ずっと「パーカー脱ごうぜぃ」とかほざいてくる変態甘党野郎。
あたしの目の前で屍みたいに倒れてる。
無視しまくってたら海にダイブしてった意味不明さ。
「栞、パーカー脱いだらどうじゃ?」
ひょいっと後ろから顔を覗かせたのは、ちょっと髪が濡れた仁王。
「やだ。あたし泳げないし」
「泳がんでもいつまでも着てたら暑いぜよ」
「あたしお腹ぷにぷにしてるの」
「この細さでぷにぷになんて言ったら、世の中のぷにぷにに謝らんといかんぜよ?」
あたしの頭を撫でると仁王はビーチバレーをしてる赤也たちのところに行ってしまった。
ブン太はというとずぶ濡れでこっちに向かってきたかと思えばあたしの隣に座った。
「栞、これ」
ブン太から渡されたのは赤い浮き輪。
「ここ、ぷぅーってしてみ?」
「・・・ん」
「ばっ、ここ押しながら膨らますんだよい!死ぬぞお前」
「おー少し膨らんだ。ブン太さんくす」
膨らまし終わると上からスッポリ被せられた。
「ちゃぷっとどう?」
「・・・うん」
渋々パーカーを脱ぎ始めると何故か興奮し出した変態ブン太。
そのままバフバフ浮き輪に足を当てながら海に向かう。
「やっぱ赤だと思ったんだよな!栞って赤似合うし俺の彼女だし」
「最後が一番意味わかんないよ」
「てかよ、お前ほんとに泳げねぇの?」
「泳げない。泳ぐってなに」
「えー、バタ足は?」
「え?バタ足?バッタの足の略称?」
「・・・うん、浮いてるか」
それにしてもブン太、ずっとあたしの手握っててくれるから・・・なんか安心する。
「栞」
振り向けば、ちゅっとリップ音が響く。
「好き?」
なにが。なんて聞く必要ない。
「大好き」
「俺も」
しばらく見つめ合って笑いあう。
「なんで今日海来たか分かるか?」
「ぜーんぜん」
「栞が前、海行きたいって言ったからだよい。幸村くんと真田を説得すんの大変だったんだからな?」
そういえば、練習が終わった後に赤也と暑いから海行きたいって話してたっけ。
「ま、最初に連れて行ってやろうって言ったのは仁王だけどな・・・」
「え、そうなの?じゃああとで仁王にお礼言わなきゃ!」
海に手を当てて遊んでいるとーーー。
バシャッという音と同時に視界がぐらつく。
「えっ!?やっ、なに?」
首に腕をまわしたと思えば頬にキスを落とすブン太。
「・・・久しぶりだろい?こうやって2人きりになんの」
ブン太の真っ直ぐな瞳があたしを捕らえる。
「栞、手出して」
「あ、うん?」
ひょいっと手を出す。
「できたぜい」
「こ、れ・・・どうしたの?」
差し出した方を見ると腕にはブレスレットがついていた。
ブレスレットには赤いガラスでできた小さな花がついててすごく可愛い。
「栞に似合いそうだと思って」
「あ、ありがとう!ブン太好きー!」
赤くなった顔を隠すかのようにブン太に抱きつく。
深蒼の真ん中であたしたちはまたキスをする。
「「大好き」」
「見せつけてくれるのう」
「羨ましいッスね、丸井先輩」
「赤也、いい加減栞は諦めるんじゃな」
「仁王先輩にだけは言われたくないッス」
Fin.