仁王雅治

□嫉妬してほしくて
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嫌い。嫌い。大嫌い。

あたし以外の女の子に触れる仁王なんて大っ嫌い。




「栞ー。どこじゃー」

「栞ならさっき後ろのドアから出て行ったぜぃ?」

「おー、ありがとさん」

仁王が出て行ったことを確認して、あたしは教卓の下から出る。

ブン太に近寄ると、ブン太はあたしに気づいた。

「ありがとね、ブン太」

「おう、バレるんじゃないかってヒヤヒヤしたっつの」

「お礼は後日、お菓子ということで」

「困ったことあったらまた言えよ。お菓子もらえるんなら手伝うぜぃ」

にっこり笑うブン太とは打って変わってあたしの顔は引きつっている。

あたしたちの方をジロリと見ているのはさっき出て行ったはずの仁王。

ドアに背凭れて腕を組みずっとこちらを見ている。

ちょいっとブン太の袖を引っ張って、仁王がいるほうを指差すと、ブン太もそちらを見る。

するとブン太の顔はだんだん青ざめていった。

「どうすんだよっ」

「うん、やばいね」

「おい!」

「んじゃあとは任せた!」

少しずつ近づいてくる仁王に対してブン太を盾にするとあたしは仁王に背を向けて走り出す。

仁王があたしの名前を呼ぶ声が聞こえるが、構わずあたしは走る。

全力で階段を駆け降りる。

「あれ?栞先輩じゃないッスか」

あたしに向かって手を振ってきたのは赤也。

「はぁ、はぁ・・・赤也・・・」

「どうしたんスか、そんな急いで・・・」

「っ触んな!」

「におっ―――」

赤也があたしの頬に触れようとした瞬間、あたしは腕を掴まれ、後ろへと後退した。

「んんっ・・・!」

するとあたしは仁王に唇を塞がれた。

あたしの生気を貪るような荒いキス。

「はっ、ん!」

「いっ・・・」

「なっにすんのよ!」

「何ってキスじゃろ?」

唇を離すと、仁王は血が出た唇をペロリと舐めるとあたしをぎゅうっと抱きしめる。

「触んないで!仁王なんてきらっ」

「言わせんよ」

「うっさい!だいっき、!」

『嫌い』を言う度にあたしの唇を塞いでくる仁王。

「んっ!やっだ!」

「栞・・・」

「なによっ」

「お願いじゃから、嘘でも嫌いって言わないでくれんかのう。お前に言われたら俺、まぢで堪えるぜよ」

「仁王が言わせてるんじゃんか!」

あたしが抗議してるっていうのにキスしてこようとする仁王にイラッとして仁王の口を両手で塞ぐ。

「いやだ」

「俺が好きなんは栞だけじゃよ?」

「じゃあなんであたし以外の女の子と一緒にいたり触れたりするの。あたしが嫉妬しない我慢強い子とでも思ったの?」

「じゃから、ヤキモチ妬いてほしかったから、あの女共のこと構ってたんじゃよ」

あたしの目をずっと見たかと思えば、あたしの額にキスを落とす。

目を閉じてキスしてこようとしたから、再び仁王の唇を手で塞いだ。

「意味わかんないんですけど」

「じゃーかーら、栞が最近ブン太とか赤也とかと一緒にいたから俺がヤキモチ妬いとったんじゃ」

「それはわかった」

「で、俺だけが栞のこと好きみたいで嫌じゃったから、栞にもヤキモチ妬いてもらおうと思ったナリ」

「馬鹿でしょ、あんた」

「うっさいのう。それだけ栞が好きなんじゃよ、黙っときんしゃい」

そう言って仁王はあたしの唇を塞いだ。

微かに開いた隙間から口内を荒らしていく仁王。

あたしは仁王の背中に手をまわして、暫く2人だけの時間に酔いしれた。

「・・・馬鹿・・・」

一瞬唇を離して、さっきよりも深く強く唇を重ねた。





―放課後―

「赤也!あんたなんであのとき逃げたのよ!」

「だって仁王先輩がめちゃくちゃ睨むんですもん!」

「先輩助けない後輩がいるか!」

「だって俺、自分の命大切ッスもん」

「あーかや。なに部活ほっぽって俺の可愛い彼女と喋ってるんじゃ?」

「ひっ・・・仁王先輩」




Fin.

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