覇道をゆく者

□春宵
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互いに貪るような口づけを交わす。夏候惇の口の端からどちらのものとも分からぬ唾液が垂れる。夏候惇は自分より小柄な曹操の身体にしがみつく。

「惇…!儂を絞め殺す気か?」

曹操が自分の下にいる笑いかける。夏候惇は慌てて腕の力を抜く。

「す、すまん、大丈夫か孟徳?」

「お前を抱きながら死ぬのも一興かもしれぬがな」

大丈夫だ、と言って曹操は夏候惇に口づける。夏候惇の夜着は乱れ、帯はもう何処かに放り出されている。胸元が開き、艶かしい姿を晒している。

「惇、儂はもう我慢が出来ぬ。久しぶりに会った途端にあの様な姿を見せられては酷というものだ」

曹操が耳元で囁く。久しぶりに会った、というくだりは何か違う気がしたが、夏候惇は黙っている。

曹操は自分の屹立した雄を取り出した。夏候惇の硬さを取り戻したそれに曹操は己の肉棒を密着させた。

「う、わっ⁈孟徳、何をっ⁈」

その行為に驚き、夏候惇は顔を赤らめて曹操を見る。曹操は気にせず二人のそそり立つ肉棒を起用に掴み、扱き始めた。

「う…あぁ…な、何か変な感じ…!」

夏候惇は肉が触れ合うその淫靡な光景から目を離せなくなっていた。互いの先走りで湿った音が響く。

肉が擦れ合い、奇妙な快感が身体を包む。夏候惇は胡座を崩し、腰を突き出した格好で曹操のなすがまま身を任せている。

「男同志ならではの趣向よ、気持ちいいだろう?」

曹操が夏候惇に口づける。曹操も快感を拾っているらしく、少し呼吸が荒い。

欲情した雄の匂いが部屋に立ち込め、クラクラしてくる。曹操の上気した表情ととんでもなくいやらしい行為をしている後ろめたさに夏候惇は知らず興奮していた。

「あぁ…」

夏候惇が甘い吐息を漏らす。先ほどまで曹操を思い浮かべ自慰をしていたが、それの何倍もの快感に身体が満たされている。先走りが溢れ、曹操の手を濡らしていく。二人の触れ合う肉棒はぬらぬらと光り、脈打っている。

「惇、もう、いくぞ…!」

曹操が辛そうな声で呻くように言う。夏候惇も限界が近かった。

「あ、孟徳…‼俺も、もうっ…!」

夏候惇の内股がビクンと震えた。二人分の精液が弾けた。曹操の手に、夏候惇の腹に、内股に白濁が流れだす。

夏候惇は脱力して、寝台に体重を預けた。射精後の心地良い快感が全身を包む。

しかし曹操は余韻に浸る間もなく夏候惇の足を持ち上げ、後孔を露わにする。手に受けた二人分の精液を夏候惇の孔に塗りたくる。

「うわっ!孟徳⁈」

夏候惇が急な展開に驚き、身を起こそうとする。曹操はその腰を抑え、指を孔に挿し入れた。

「あぁっ!ひ…っ!」

夏候惇はその感覚に未だ慣れていない。精液が潤滑油変わりになり、辛うじて痛みはないものの、急な侵入に身体が拒否反応を起こしている。

「惇、すまんな。手荒な真似をするが…儂はもう我慢が出来ぬ。お主を抱くぞ」

曹操は指を二本にし、更に後孔を抉る。夏候惇はそれを下唇を噛み、耐えている。充分とは言えないが抵抗なく指が抜き差し出来る具合になったことを確認し、曹操は己の猛る雄を夏候惇の孔に突き立てる。

「入れるぞ、惇」

曹操の余裕のない声。夏候惇は曹操の顔を見て、小さく頷いた。

「あっ…んっ…!」

夏候惇が呻き声を上げる。
何とか先端が入った状態だ。夏候惇のきつい締め付けに曹操は更に腰を進める。

「惇、痛むか?」

優しく呼びかける曹操の声も苦しげだ。夏候惇は大きく息を吐いた。

「痛い、けど孟徳と…繋がりたい…から」

夏候惇の身体から力が抜けた。曹操はゆっくりと夏候惇を貫いた。

「んう…っ」

夏候惇が小さく呻き、敷布を握り締める。曹操は夏候惇の脇腹を優しく撫でる。

「あぁ、お主の熱で溶かされそうだ」

「俺の中…孟徳がいるのが分かる…」

曹操は夏候惇の頬に口づけ、ゆっくりと律動を始めた。最初はきつく、痛みを感じるほどだったが、だんだんと抜き差しする行為に同調するかのように収縮する内壁が意識が飛びそうな程の快感をもたらす。

「気持ちいいか、惇」

「あぁ、いっ…いいっ…おかしくなりそ…っ!もう…とくっ」

曹操が内壁を突き上げるとき、夏候惇が時折、鋭い嬌声を上げる。そこがいい場所だと本能で理解した曹操はそこを責め立てる。

「やっ…あぁあああっ」

夏候惇の乱れる姿に曹操もいつもの余裕を無くし、さらに律動を早めていく。

「惇、いくぞ」

曹操が夏候惇の最奥を突き上げた。夏候惇の身体が跳ね、寝台を白濁で濡らした。曹操も夏候惇の体内で果てた。

二人は荒い呼吸をしながら抱き合ったまま、しばらく互いの体温を感じていた。



「すまん。お主に淋しい思いをさせたな」

曹操が優しく夏候惇に言う。夏候惇の指に己の指を絡め、ぎゅっと握り締める。

「…何時でも会える、そう思っていたが…」

こんなにも、会えない時間がつらいとは。と夏候惇は思った。

「これから儂の寝所で寝起きしろ、惇」

「はぁ⁈そ、そんなことしてたら宮中で噂になるだろ」

夏候惇が呆れ声で言う。曹操は声を出して笑った。

「噂など、構わんがな。毎日でもとなるとお主を壊してしまいそうだのう」

「ば、馬鹿な…‼」

ニヤニヤしながら言う曹操に夏候惇は顔を赤くして背を向ける。

曹操はその背を抱く。夏候惇は心地良い温もりに満たされる思いがした。

「業務が落ち着いたら、ゆっくりと花見でも行こうな」

曹操の言葉に夏候惇は小さく笑う。

「今のお前にそんな暇はないだろう」

「いや、花が散る前に必ず」

曹操の言葉が、素直に嬉しかった。

「ああ、信じている」

夏候惇は曹操に向き直り、照れながら口づけた。

「では二回戦といくか」

「な、なに⁈」

曹操の余裕たっぷりな笑みに夏候惇は後退る。

「今夜はお主をたっぷり愛してやろうと決めた」

「い、いや、もう充分だし…も、孟徳、やめ…‼」





翌日から曹操の仕事振りが目に見えて変わったと側近、軍師達の間で専らの噂になった。曹操は並み外れた集中力を見せ、皆を圧倒させた。

一方、将軍達の間では夏候惇が最近ぎっくり腰をやった、夜も痛くて眠れず寝不足だという話でもちきりだった。

何人かの将たちは生温かい目で夏候惇を見守るばかりなり。

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