戦勇

□シロツメクサの恋
1ページ/3ページ

花畑にはたくさんの蝶が舞っている。
その中で、アルバとクレアは花を摘みながら話をしていた。
クレアの手の中には制作中の花冠がある。
クレアが花畑の中で座っているのを見つけたアルバが話をしようと近寄ったら、花冠を作っていたのだ。
「これ……クローバー?」
「うん、シロツメクサだよ」
くすり、と笑うクレアはまた一本、花をぷつりと摘み取った。丁寧に花冠の中に差し込んでいく。その手は傷も多く、決して美しい手だとは言えない。けれど、その指先はたやすく美しいものを作っていく。器用だという以外のなにかも同時に持っている。
その手をアルバは綺麗だと感じていた。
「綺麗ですね」
アルバが感嘆の息をこぼすと、クレアはでしょ!と笑った。
その返答から、アルバの言葉の行き先を勘違いしているのだろうということはすぐに分かったが、その勘違いを訂正する気はなかった。そのままでもなんの問題もないだろう。むしろ、勘違いしていてもらった方がいいかもしれない。
そう思って、アルバは、はい、と頷く。
「クレアさんって本当に器用ですよね」
「そう?」
褒めるとすぐに嬉しそうにする青年は、自分より年上だというのにかわいいという思いを抱くような反応を返す。それが素だというのだからすごい。
アルバがそうやって、クレアと話していると、不意になにかを思いついたのか青年は、そうだ!と声をあげた。
「ねえねえ、アルバくん。花言葉、って知ってる?」
「花言葉?……いえ」
首を横に振ると、クレアは少しほっとしたように笑った。それに気がついたアルバがどうしたのかと尋ねようとするとその前にクレアは言葉を続けた。
「たとえば、クローバーには幸福って意味があったりとかするんだよ」
「へえー」
「他にも花冠にはね……」
うんちくを語るクレアは楽しそうで、アルバも興味深そうに相槌を打って返した。そのおかげで先ほどのことを尋ねるタイミングを逸した。しかし、そのことをあえて追及することはない。
「クレアさんって物知りなんですね」
素直に、すごい、と零すとクレアはえへん、と胸を張った。
「でしょ!」
そう言ってからまた一本シロツメクサを差し込んだ。
「完成!」
出来上がった花冠は綺麗に編み込まれていてかわいらしい。アルバに見えやすいように持ち上げたクレアはどうかな、と問いかけた。それにすっごく綺麗です!と即答したアルバに気を良くしたのかクレアはそっか、と頷いてそのまま手渡す。
「これ、アルバくんにあげるよ」
「え、いいんですか!?」
わあ、と嬉しそうな顔をするアルバに、クレアもこれまた嬉しそうに笑って手を広げた。
「もっちろん!アルバくんのこと大好きだからね!」
アルバが冗談交じりに冠をかぶると、クレアは似合ってるよ、と幸せそうに優しく微笑んだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ