K(アニメ)二次本文

□そうめん
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 音を立てないように食べるのは、見た目に反して非常に難しい。伏見は器用な方だが、まずまともな食事をあまりとらない。そのため、箸さばきはごく普通、と言ったところで弁財には遠く及ばない。いや、この場合は箸さばきだけの問題だけではなく姿勢も口の動かし方も関係しているのだから一筋縄でいくわけもない。
 見よう見まねでやってみるが、なかなかうまくいかない。
 しかもそれを微笑ましそうに見守る人間がいると集中できない上、相手が自分のできないことを悠々としてのけるのだから腹が立つ。それが子どもじみたことだとは自覚しつつも感情なのだから、自分ではどうにもならない。
「そんなに気にするほどでもないですよ」
「そんなに、って時点でムカつく……」
 フォローを入れたつもりだろうが、伏見はフォローを素直に受け取らないタイプだ。悪態をついて、それでもめんを口に運んでいると、弁財はとんでもないことをさらりと言った。
「そんなに気にしているならいっそ俺が伏見さんに食べさせるとか」
「!?……っげほ!」
 奇しくも飲みこむ途中であったため、ギリギリ吹き出さずに飲みこんだものの、無理矢理だったために変なところに入ったのか咳き込むはめになった。ゴホゴホと咳をする伏見に、弁財は大丈夫ですか、と慌てて立ち上がった。伏見の後ろに手を当ててさする。
「お前な……っ」
 何故そうなるのか。伏見にはさっぱり分からなかったが、弁財にとってはおかしな思考ではないのだからどうにもならない。
「はあ……」
 やっと咳がおさまった伏見が大丈夫だと手を上げて知らせれば弁財はほっとした様子で席へ戻った。
「……どうします?」
 弁財の示すところが先ほどの食べさせてもらうかどうかだということに数十秒経って思い至った伏見はさすがに叫んだ。
「するわけねーだろっ!!」
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