K(アニメ)二次本文

□初夏にチョコレート
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「伏見さん、チョコレート食べませんか」



 人にもらったのだというチョコレートを持って自室を訪ねてきた秋山を伏見は呆れた顔をしながらも部屋へ上げた。あからさまに高いものだと分かるそれらを無造作に一つの袋につっこんでいたせいもあるし、まず人にもらったものなら自分で食べろよ、と思ったこともある。
 基本的に人当たりが実のところ、そんなに「いい人」ではない。バレンタインのチョコレートも一人では食べきれないからと伏見にも食べさせたし、まず手作りはもらわない。一応、「本命には応えられないから」という名目で断っているらしいが、義理でも手作りは食べない。前に少し探ってみたら学生時代にそれで酷い目にあったらしいが、手作りを「気持ち悪い」でくくってしまう人間は「いい人」であるはずもない。それを知りながら秋山のもらってきた市販のチョコを食べている伏見が言えた義理でもないのだろうが。
「これ、どれだけあるんだよ……今日はバレンタインじゃないだろ」
 大きな黄色の紙袋につめこまれた箱を机の上に広げて、伏見は眉をひそめた。バレンタインなら、秋山が大量にチョコレートをもらってくるのはもはや恒例行事だ。ちなみに伏見は渡そうとしてくる人間はいるのだが、それをほとんどの場合断っているのでほとんどもらわない。伏見は無愛想だったりそういう行事にのりたがらないことは既に周囲に知られているので実は今さら反感を買ったりはしない。秋山ならこうはいかない。ちなみに、伏見はなんだかんだと気心の知れた特務隊員と、実は互いに信頼関係を築いていたらしい情報課で交流のあった面々からは受け取る。
 しかし今は初夏で、何の行事があったわけでもない。お中元にしても早すぎる。
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