K(アニメ)二次本文

□くるりと一週また元通り
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 一緒に、同じ場所に刻みつけたシルシは自分たちを繋ぐものではない。自分たちを引き裂くものだ。
 アイツが憧れるというあの人が手渡した赤は、しっくりくるようで、そうはなってくれなかった。もしアイツより先に会っていれば、もしかしたら受け入れられたかもしれない。ゆっくり。時間をかけて。
 あの人も、年長者の二人も急げ、早くしろとは急かさなかっただろう。むしろ無理をせずゆっくり馴染めと、少しずつ手をとれるようにしてくれたろう。これはただの妄想や願望ではなく、彼らが望んでいたことだ。実際、そうやって見守っていてくれた。
 けれど、無理だった。
 そう。同じ場所にシルシが出たからアイツはなおさら、アイツと俺が同じだと信じ込んだ。もし別の場所にシルシが現れたなら、少しでも変わっていたのだろうか。
 多分、自分に赤色が宿ったのは相性以前に、あの人に気に入られたからだ。俺は他のヤツらのようにあの人を尊敬するわけでも崇拝するわけでもない。多分、それを知って、気に入られた。王になる前からの友人と同様に、王と臣下ではない関係になれると思ったのだろう。確かにそれは合っていた。ただ、既に俺には唯一無二があって、あの人にそれをとられてしまった。だから、俺はあの人と仲良くするなんてできない。アイツさえとられなければ友人でなくてもそれなりに関係は築けたのに。
 それを分かってるから、あの人たちは俺を詰りはしなかった。アイツのように裏切り者だと敵意を向けるではなく、憐れみと罪悪感と心配を混ぜ合わせたものを注ぐ。比率はそれぞれ違ったけれど。
 アイツの背中じゃなくて正面から顔を見たかったから赤から青へと移る。その時、赤色から逃れられた、と思う自分がいて結局俺とアイツらは違うものだったんだと知った。赤をただ純粋に盲目的に思うヤツらとその赤を受け入れられない俺。同じはずが、なかった。
 青色を得て、ほっとした。これでアイツが俺を見てくれる。これであの人からもらった赤色をただ暴走させることもきっとない。
 暴力を象徴とすると言われる赤色は力が強ければ強いほど、それだけ強烈な破壊衝動と自滅願望を持つらしい。俺も、例外じゃない。
 いつもはなんなく抑えておける。でも、アイツが絡むと違う。そのままではアイツも巻き込んで死んでしまいそうで、誰もいない時に死んでやりたくなった。中学の時なら、アイツが止めてくれると信じれた。でも、もうそんなことは思えない。今のアイツじゃいざという時、俺が殺してしまうだろう。それじゃあ駄目だ。そんなことするわけにはいかない。
 インスタレーションを無事に終えた時、ふっと胸の内が凪いで知らず詰めていた息を吐き出した。それを見た室長が小さく笑ったけれど、それはいつものようなものじゃなかったから何も言わずにこれからお願いします、と頭を下げた。
 裏切り者!
 そう罵るアイツの声が耳の奥で、頭の中で反響する。じわじわと痛む感覚を意識からシャットアウトさせて。
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