K(アニメ)二次本文

□雪の日
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はらはらと落ちくる欠片を見上げて、マフラーもコートもつけないで佇む。
真っ黒な瞳に映っているものは、遠い自分からは見えず、もどかしい。いや、ほんの少し駆け寄ればすぐに触れることができるはずなのに、今は何故だか遠い、と感じた。いつもはもう少し近かったはずの距離が、今はこんなにも離れている、と。
元々柔らかい髪はワックスで形を保とうとしていたが、積もりつつある白に今にも負けそうで、少しだけ揺れていた。細く聞いた唇の隙間から欠片よりもさらに白い息がもれて、暗い世界に、淡い花を咲かせるのを、何も言えずに見つめていた。
風もない冷え切った空気の中、真っ白な色の見えない世界の中。
二色だけをまとう彼は、ずっと空を見上げていた。
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