K(アニメ)二次本文

□ずっと知ってた
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「サルヒコ」
「ストップ」
アンナが今までに何度か見た堅い表情で伏見を見た瞬間、伏見は空いたままだった左手を彼女の目の前にかざして言葉を食い止めた。
彼女から言わせることは、嫌だった。
「……サルヒコ?」
彼女は、伏見が彼女の気持ちに気がついていることは既に悟っている。だからこそ、言う前に止められたことにとうとう瞳を揺らがせた。
そのことに舌打ちをしたくなって、伏見はすんでのところで自重した。そんなことをすればさらに誤解させるだけだ。
結局、すぐに解けるような誤解だとしても、無駄に彼女を傷つけたくないと思っていた。
そんな、砂糖ばかりの甘ったるいミルクティーみたいな感情が、確かに伏見の中にある。その存在は、ずっと前から知っていた。ただ、言葉を見つけて名づけて、それを、そうだと認めてしまうのはいけないと自分を縛っていただけ。
今は、そう。
そうやって彼が自分を偽っているから、アンナがこんな目をしてしまったのだ。
「アンナ、よく聞けよ」
どうしてこうも、自分は口が悪いのか。どうしてろくに甘やかせもしないのか。
伏見は自分のバカバカしさに罵倒したくなりながらも、確かに彼女に届くように、言葉を探した。できるだけ簡潔で、相手に伝わりやすい言葉。飾り気なくてもいい、相手に誤解されずに届く言葉。
「アンナ、俺は……」
酷くみっともなく声が震えそうになる。手に汗がにじむようで、伏見は柄にもなく緊張している自分を分かっていた。
それでも、今さっきアンナが感じていただろう不安や恐怖に比べればまだマシなはずだ、と無理矢理考えて、はりつきそうになる舌を動かした。
「お前が好きだ」
言って、伏見は自分のしたことに後悔しそうになる。
なんで、言ってしまったのか。他に方法はなかったのか。ここで彼女を傷つけるとしても、また別の方向へ進めるように伏見はできたんじゃないか。
ぐるりと思考が回る。
それでも、次にアンナが言った言葉に、そんな考えは一瞬で吹き飛ばされた。正確には、全部忘れてしまうような思いになった。
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